コラム

コラム「グローバル連結経営管理を考える」

グローバル連結経営管理を考える 中澤進  ビジネスブレイン太田昭和 会計システム研究所 所長 日本CFO協会 主任研究員

第1回 二つのグローバル化 ”ビジネスのグローバル化と証券市場のグローバル化”

ビジネスのグローバル化と証券市場のグローバル化

グローバル化の議論を進めるにあたりビジネスと証券市場という二つの視点から考える。

いささか旧聞であるが2005年トーマス・フリードマンが提唱した「フラット化する世界」で述べられたように、インターネットの加速度的普及が起爆剤となり情報のみならず人的資源までもが国境越えて流通される時代に入っている。そして、それはFacebook、Twitter等のSNS(ソーシャルネットワークサービス)に代表されるように更なる展開を見せている。 その中でブルーチップといわれる欧米優良企業は、その「フラット化する世界」の流れに沿った動きを実践している。最もコストの低い地域で物を作り、最も需要のある地域で販売をし、最も法定税率の引く国で利益を上げるという経営管理モデルである。 翻って日本企業を見るとそこまでの徹底した経営管理モデルを構築している企業は皆無と言ってよい。良い物を安くという日本企業が構築して来たビジネスモデルもいまやBRICsを代表とする新興国企業に完全にキャッチアップされ、日本企業として新たなビジネスモデルへの転換すら求められている。 また、生産地であった中国・アジア地区を企業の成長の源となる消費地と転換して行く中で、その変化に対応して行く事も喫緊の課題となっている。

ビジネスのボーダーレス化がもたらす影響

いずれにしても、このグローバル化の流れは如何ともし難いものであり、会社のみならず国という枠組みすら越えたボーダーレスの企業運営が必至となって来たのである。そこで、待ち受けている大きな課題は異人種・異文化・多言語というダイバシティー(多様性)への対応であり、経営のボラティリティー(変動性)の増大である。

まずダイバシティーの点については、日本人の特性であり強みでのあった性善説・阿吽の呼吸を軸とした企業運営が、阻害要因になる可能性がある。異人種・異文化の中では、経営の意思の伝達、透明性・公平性を持った組織・個人の評価という観点からアナログ型管理からデジタル型管理へ、あるいは暗黙知から形式知を基本とした管理スタイルへの転換が必然となる。プロセス・ルールに依拠した属人性を極力排除した企業運営への転換が求められる所となる。

加えて、このビジネスのボーダーレス化がもたらす大きな変化は経営のボラティリティー(変動性)の増大である。80年代あるいは90年代前半までの国あるいは会社という単位が独立性を持っていた多国籍企業時代以前においては欧州の金融危機もアジアにおける自然災害も地域限定のものであったかも知れない。

しかし、このボーダレスの世界では世界各地で発生する事象の影響が瞬く間に連結企業全体に広がるような状況になった事は周知の事実である。そこでは、連結企業グループを一つの企業として捉えかつ過去からトレンドに基づいた精緻な予算の仕組みよりは将来情報を活用した柔軟な軌道修正が可能となる経営管理の仕組みが必須となる。

証券市場における新ルール、IFRSの重要性

もう一つのグローバル化は証券市場のグローバル化である。

インターネットの加速度的発展はビジネスのグローバル化もさることながら証券市場のグローバル化により大きな影響を与えている。 世界各地の市場の動向はサイバー空間を通じて一瞬のうちに世界を駆け巡り、国と言う要素はリスクヘッジの対象とならなくなっている。また、どの国の市場であろうと上場されている株式の売買は国境を超えて成立する。これは東証の外国人投資家の売買比率が60%を超えていることからも良く分かる。
このような状況になると、このグローバルに展開された証券市場におけるビジネスゲームの共通ルールが必要になってくるのは自明の理である。そこでもっとも重要視される情報は財務諸表で表現された企業実態であり、そのベースとなるのが会計基準である。 IFRSは証券市場におけるビジネスゲームのルールである。ルールを知らずしてゲームには参加できない事を強く認識しなければならない。そこでは、グローバルの価値観との直接的な対峙が求められる。すなわち、有利な条件での資本調達を求める株式会社、リターンの大きい投資を狙う投資家、両者にオープンでフェアーで効率の良い取引の場を提供する証券市場という3者の価値観を理解した上での振舞いである。
特に、情報強者の経営者と情報弱者の投資家間での情報の非対称性を最小化するため、経営実態を透明性が高く適切なタイミングでの情報開示が求められる。そのためには開示情報と内部管理で活用する数値が円滑の連携された情報基盤が整備されて置かねばならない。

今回は、ビジネスと証券市場という視点でグローバル化を考えて見た。次回は、このような環境下でどのような経営管理の仕組みが求められるか解説をする。

 
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