コラム

コラム「グローバル連結経営管理を考える」

グローバル連結経営管理を考える 中澤進  ビジネスブレイン太田昭和 会計システム研究所 所長 日本CFO協会 主任研究員

第4回 連結ガバナンスのパラダイムシフト
“会社枠・国境を超えたマネージメントガバナンスとプロセスガバナンスの構築”

連結ガバナンスの本来の在り方

連結経営管理の仕組みとは、特別なものではなく、今まで述べて来た管理会計のフレームワークが連結企業グループ内に展開され、そこに連結固有の取り組みが追加されただけのものだとの認識をしなければいけない。その連結固有の問題でかつ日本企業にとって最も重いのが連結ガバナンスの在り方についてである。

連結企業グループは、投資家から見ると一つの企業であり、経営者側から見ても経営資源の最適活用のためには論理的な一企業体でなければならないというのが原点である。製造子会社は製造部門であり、物流子会社は物流部門として考えるべきである。我々は、それをシングルカンパニーモデルと称する。グローバルに展開している欧米企業を見ても会社という法的枠組みは、事業活動にはほぼ影響を及ぼしていない。これは欧米企業の日本法人の活動を見れば良く理解できる。欧米での日常の企業活動を背景にしたIFRSが、連結財務諸表とは単一企業体のものであると言っている背景がここにある。
我々が、これから戦っていかなければいけない欧米企業あるいは新興国企業も含めてこの考え方は常識であると言って良い。

マネージメントガバナンスとプロセスガバナンスの構築

この連結ガバナンスはマネージメントガバナンスとプロセスガバナンスにより構築される。予算管理サイクルによるマネージメントガバナンスを縦軸とするならば、プロセス・ルールによるプロセスガバナンスは横軸となる。
このマネージメントガバナンスは企業グループ戦略軸である事業セグメントが軸となる。そこでは、事業セグメント長が明確に任命され、生販全体に渉る経営資源の最適配置に関る権限と責任が付与されていることが連結経営管理の仕組み構築の第一歩となる。ここが明確になっていなければいくら良い仕組みを作ってもマネージメントガバナンスは機能しない。すなわち、事業セグメント長は子会社社長よりはるかに大きい権限と責任を持つ事を連結企業グループに徹底し、予算管理サイクルを回して行かねばならない。

また、プロセスガバナンスの整備は、連結企業グループとしての透明度の高い事業運営を行うためには極めて重要であり、均質で精度の高い情報の確保にはプロセスの標準化が肝になる。これは内部統制の整備として考えられるべきものである。そのためには、これも欧米企業では当たり前となっているプロセスオーナーという役割・機能が重要となる。
JSOXプロジェクトで語られた役割であるが、ここでは、連結企業グループ全体を通しての議論であり、かなりの上位マネージメントが担当しなければならない。このプロセス・ルールに立脚する議論は日本企業がもっとも苦手としている領域であり、今後の取り組みの大きなポイントと言える。

このような連結ガバナンスモデルの上に、まず、各事業セグメントのキャッシュフローの最大化が企業グループとして獲得するキャッシュフローの最大化に直結したセグメントの設定をしなければならない。また、その配下にある組織がその役割に応じた業績評価基盤で活動する事が求められる。
例えば、求められる数値責任が、常に会社法上の決算数値としての売上・利益と言う概念は必要なく、製造子会社であれば製造コストの最小化、間接部門のシェアードサービス会社であれば提供するサービス経費の最小化という、その組織の役割に沿った責任を果たせば良い。いわゆるコストセンターと呼ばれる組織での売上・利益の最大化は往々にして連結企業グループとしてのキャッシュフローの最大化を阻害する事となる。最終的には事業セグメントの価値最大化のための外部から獲得される売上・利益・キャッシュフローのみに着目した管理会計の仕組みとしなければならない。

連結企業グループの経営資源を最適活用するために

会社法上の枠組みを越えた議論の一例として、日本の製造業にとって、喫緊の課題となっているが連結ベースでの原価管理である。グローバルへ展開せざるを得なくなった製造業で、連結企業グループとしての真の原価が見えないという議論である。但し、連結原価管理を語る前に管理会計と同様、原価計算・原価管理の仕組みそのものが、いささか制度疲労を起こしてしまっており、各企業とも見直しの必要性を迫れているという実態がある。
会計基準として原価計算基準へのこだわり、あるいは、財・管一致をあまりにも求め過ぎた故に、精緻な原価計算の仕組が構築されたものの、経営管理に資する原価管理の仕組としては今ひとつ機能していないという状況がある。ここでは、連結原価への取り組みと平行して原価計算・原価管理の在り方についても取り組むべきであろう。これは管理会計そのもの見直し議論と同根である。

いずれにしても、日本企業にとって連結を主体とした情報開示が求められるようになったのは2000年3月期からである。米国企業と比べ6~70年の歴史の差がある。欧米企業と伍して戦うためには、連結企業グループの限られた経営資源を最適活用を可能とする経営管理の仕組みを構築しなければならない。そのためには連結企業グループは論理的に一つの企業体であるという考え方で現状の仕組みを見直していく事は必至である。

 
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  • (株)ビジネスブレイン太田昭和 公認会計士 谷渕 将人2019.09.27更新
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