コラム

コラム「グローバル連結経営管理を考える」

グローバル連結経営管理を考える 中澤進  ビジネスブレイン太田昭和 会計システム研究所 所長 日本CFO協会 主任研究員

第5回 日本企業としてのこれからの取り組み “普遍性と独自性の組合せ”

日本企業としてのこれから取り組み

連結経営管理の仕組みとは、特別なものではなく、今まで述べて来た管理会計のフレームワークが連結企業グループ内に展開され、そこに連結固有の取り組みが追加されただけのものだとの認識をしなければいけない。その連結固有の問題でかつ日本企業にとって最も重いのが連結ガバナンスの在り方についてである。

連結企業グループは、投資家から見ると一つの企業であり、経営者側から見ても経営資源の最適活用のためには論理的な一企業体でなければならないというのが原点である。製造子会社は製造部門であり、物流子会社は物流部門として考えるべきである。我々は、それをシングルカンパニーモデルと称する。グローバルに展開している欧米企業を見ても会社という法的枠組みは、事業活動にはほぼ影響を及ぼしていない。これは欧米企業の日本法人の活動を見れば良く理解できる。欧米での日常の企業活動を背景にしたIFRSが、連結財務諸表とは単一企業体のものであると言っている背景がここにある。
我々が、これから戦っていかなければいけない欧米企業あるいは新興国企業も含めてこの考え方は常識であると言って良い。

マネージメントガバナンスとプロセスガバナンスの構築

今回は、これまでの議論を振り返りながら、日本企業としてのこれからの取り組みのポイントを整理する。 そもそも管理会計には決まった形式はなく、その企業の持つ歴史・文化あるいは経営者の価値観によって大きく変化する。ただし、管理会計の仕組みは企業独自のものとは言え、普遍的なインフラ部分はある。そこに、グローバル・グループと言う視点が入る事で、このインフラ部分はより一層鮮明となる。
「フラット化する世界」では連結企業グループの国境を越え、会社枠を超えた事業セグメントを軸としたシングルカンパニーと考える事、「ボラティリティーの増大」という経営環境では、経営管理の要点は過去情報でなく将来情報にある事、「異人種・異文化」が前提となるグローバル化がもたらすダイバシティーへの対応では属人性を極力排除したデジタル管理の仕組みが必須である事などは、これからのグローバル連結経営管理の仕組みを考えて行く上で共通的な概念となる。
そのような事が要求される中、これまで、日本企業を支えてきた“性善説・阿吽の呼吸”あるいは“以心伝心”による意思決定の早さ、コミュニケーションコストの低さを前提にした業績評価、業務プロセス、ITシステム等は、グローバル・グループの異人種・異文化というダイバシティーの中では、阻害要因になる可能性が高い事を認識しなければならない。また、子会社のガバナンスを強く認めた連結経営のやり方、あるいは上場子会社の存在は限られた経営資源を全体最適として有効活用するには不適切なモデルであると言わざるを得ない。

勿論、これらを全否定をするわけではない。例えば、カイゼンにみられる生産現場の強さ、大部屋スタイル的発想による組織横断的な連携の強さ、勤勉さ・粘り強さ、等々、日本企業・日本人の強みと言われるものである。これに対して、欧米企業においてはしきりにチームワークを叫ぶ傾向にある。これは、敢えて明示的に言わなければチームプレーが出来ないが故のスローガンである。

普遍性と独自性のバランス

昨今、終身雇用、年功序列、労使協調という日本企業を支えてきた仕組みが崩壊しつつあると言うよりせざるを得ない。また、会社構成員の意識も若手社員を中心に変化して来ている状況は衆目の一致する所である。但し、日本人としての国民性・アイデンティティーは、日本語があるのと同様、厳然として存在する事も事実であり、今後ともし続けるであろう。
すなわち、今まで述べてきた、グローバル時代におけるシングルカンパニー・先読み情報・デジタル管理という普遍的な経営管理基盤の上に、日本人・日本企業としての良さ・強み、あるいは経営者の色を出した仕組みを構築して行く事で、経営効率の確保と日本企業の独自性を発揮できる仕組みとなるのではないだろうか(図表)。

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この普遍的部分と独自性を持った部分のバランスはその企業が持つ歴史的・文化的背景により決定されるものであり、今後のグローバル時代における経営管理の仕組みを考える上での要諦である。

 
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  • (株)ビジネスブレイン太田昭和 公認会計士 谷渕 将人2019.09.27更新
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