コラム

コラム「コスト最適化に向けた取り組み ~コスト削減を超えて~」

(株)ビジネスブレイン太田昭和 マネジメントコンサルティング部 米国公認会計士(in-active) 鮫島 一彦

第3回 コストを削減する場合の業務改善方法

最終回は、コスト削減と業務改善の進め方のについて、人に関するコスト最適化を意識して、ABC/ABMを活用した方法について説明したい。
いわゆる人に関わるコストは、なかなか客観視することが難しく、管理部門長は経営者からの間接コスト削減要請に対して、「シェアードサービス化、人員削減やアウトソーシングなどを活用して何割削減します」と一声で回答してしまい、これまた経営者と根拠をもった数字を握らない状況で約束してしまうケースも見受けられ、終いには、一律コスト削減となってしまっては、第1回にも述べたとおり、人に関しても競争力を低下させる要因となってしまう可能性がある。
そうならないためにも、コストの全体像をとらえた上で、適切な切り口で現状業務を可視化することは、次ステップ以降に必要なデータを整備するだけではなく、ステークホルダー間で合意形成するための重要なデータを整備することにもなる。
今回は、ABC/ABMを活用した業務コストの可視化及びその可視化された情報に基づく業務改善を中心に説明を進めていきたい。

まず、ABC(活動基準原価管理)とは、ビジネスを活動(アクティビティ)単位に細かく分解・分類して活動単位のコストを算出することであり、ABMとは、ABCによるコスト情報をもとにして、それを業務改善に結びつけ、利益の改善を目指していく考え方である。

こうした可視化においては、上記のように業務活動コストとして、誰が何をやっているのか?どの活動(業務)にいくらかかっているのか?を把握すると同時に、そもそもどうしてそのような状況なのか?という定性的な情報も、インタビューなどで収集しておくことが好ましい。
例えば、昔から前任者がやっていたやり方、暫定的に始めた業務、かつて利用されていたが現在使われているか不明な書類作成、ある時期に内部統制の観点から必要だった処理が今では別のコントロールで対処されているにも関わらずそのまま継続運用されている、過去の上長の趣味的に始められて継続運用されているものなど、すなわち、無駄な業務であったり、非効率な業務が残っていたり、定型化され繰り返し行われる業務にも関わらずシステム化できていない業務も浮かび上がる。
また、誰がその業務をやらせているか?の視点も必要であり、株主や金融機関のリクエスト、顧客・販売チャネルからのリクエスト、昔・今の経営者からの指示、会計士・税理士からの指導、行政機関の指導など、誰が受益者かも理解し、内部でこうした活動コストをオープンにして、サービス受益者に対するクロスチャージ(サービス対価の請求)も一案である。
このように収集された情報に基づいて、各業務領域において比率の大きい業務を把握して、改善施策の検討に活用したり、個人別の時間集計をベースに各担当者自らが担当する業務の比率を把握することでコスト意識の向上を図ったりすることができる。
さて、それでは具体的な改善施策の検討について、ご紹介したい。
間接部門において業務量が大きい活動として、メール・電話対応・相談・報告業務・依頼・問合せ対応があげられるが、改善するには、内容詳細を追加分析(電話であれば、受信と発信のどちらが多いのか?受信する場合は問合せ、依頼、報告のどれが多いのかなど)したうえで、内容毎に改善施策を策定する。改善を検討する際は、件数の低減、対応の効率化などが挙げられる。
件数の削減に関する改善施策としては、問合せ元の啓蒙/教育、情報受信/発信ルールの設定・徹底、FAQの完備もしくは強化などがあり、対応の効率化に関しては、標準化/定型化によるプロセス改善、情報共有方法の工夫、メール送信ルール徹底などがある。又、業務分担そのものに課題がある場合には、対応範囲の再定義、窓口機能明確化なども時には検討の余地がある。
その他に、間接部門では会議が多いケースがあり、こちらも、会議内容を追加分析(目的、参加者:役割、所要時間内訳、インプット/アウトプットなど)したうえで、改善施策を策定する。改善案は、会議回数の削減、会議生産性の向上、の両面から検討する。
会議回数の削減については、開催頻度の変更、類似会議の統廃合、参加者の絞込み、会議目的・アジェンダの精査、代替手段の活用、メール/データベース/グループウェアの活用などがあり、会議生産性の向上については、事前内容確認、会議進行の標準化、運営ルール設定・徹底、役割分担明確化、ファシリテーションスキル向上、事前情報共有化、会議評価指標策定、雛形活用(過去データ活用)などの方法がある。 上記のようなことを書くと、細かいことばかり、当たり前のことばかりと思われるかもしれないが、例えば会議に関しては、「出席者数」、「会議の回数」、「時間」の3つをそれぞれ2分の1へと減らせれば会議コストはこれまでの8分の1にできる。こういったことを意識するだけでも、現場に変化が現れるだろう。
もしかすると、工場をイメージして頂くと理解できるかもしれない。工場の業務は比較的可視化されており、原価管理というコスト計算の仕組みもある。それにより、改善が進んでいくのである。これと同じように、間接部門においても、「見えないものは管理できない。」見えるようにすることから始めるのが重要であると私は考える。

以上、可視化とそれに基づく改善施策の検討について述べてきた。
尚、ABC/ABMのリストは、追加情報を付加することにより、業務改善案策定だけではなく、幅広いアウトプットに展開することが可能な”基礎データ”となるため、参考までに活用・展開例を掲載する。

最後は、少しコスト最適化から外れる部分もご紹介したが、今回のコラム全体を通じて、コスト削減はゴールではなく一つの道しるべであることを意識し、コスト最適化に向けて継続的な業務改善に取り組んでいただくことを願っている。

 
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