こんな影響もあったのか!新収益認識基準を早期適用して気付いたこと

3月決算会社は、2021年4月1日開始事業年度から新収益認識基準が適用されることになり、各社適用に向けてプロジェクトを開始されていると思います。

弊社では強制適用に先駆けて、2019年4月1日開始事業年度から早期適用を開始しましたが、実務対応をすることでいろいろ見えてきたことがあります。

  1. 計上を見込んでいた売上が消える
    意外と見落としがちなのが、この「計上を見込んでいた売上が消える」という結果です。3月決算会社の場合、従来4月以降に完成基準として売上が計上されるものが、過去から進行基準を適用していたとして、過去分の利益が期首の剰余金に計上されてしまい、4月以降の完成基準ベースの売上が計上されなくなってしまいます。特に管理会計上、売上や粗利をベースに業績管理されている会社は注意が必要となります。
  2. 原価回収基準を適用すると粗利率が低下する
    新基準では新しい概念として原価回収基準が適用されますが、原価回収基準は売上金額と売上原価の金額を同額で計上、つまり、利益ゼロで計上することになりますので、一時的には粗利率が低下することになります。最終的には利益が計上されることになりますから、トータルでは利益額に影響はありませんが、原価回収基準を適用する初年度は特に注意が必要となります。
  3. B/S上、仕掛品と相殺していた受注損失引当金が復活
    赤字プロジェクトに原価回収基準を適用しますと、相殺対象となる仕掛品が無いために、負債側に結果として受注損失引当金が表示されることになり、もともとあった赤字プロジェクトがあたかも新基準への移行時に新たな赤字プロジェクトが発生したかのように見えてしまうということが起こります。特に隠していたわけではないのですが、露骨に見えてしまうという点に注意が必要です。

「新収益認識基準は財務会計の話でしょ」という声をよく聞きますが、財務会計の変更にあわせて管理会計も変更するのか、従来の管理会計の数字を出すために別途業務&システム対応をするのか、そういったところまで考えて基準適用に臨むことが重要となります。