第5回 連結経営管理の課題

課題の類型化

連結経営管理の今後を考えるに当たり、弊社のトップクラスのコンサルタントにより、多くのお客様が抱える課題を抽出しました。二百を超える課題が抽出され、コンポーネント単位に類型化を行いました。ここでは、その一部を見ていきます。

コンポーネント名 課題例

連結予算管理

  • 予算編成、予算の見直し、見込みの作成がExcelベースで「多大な工数」
  • 製造子会社と販売子会社の「予算の整合性」の確保が困難
  • 「予算根拠がバラバラ」で、内容分析が困難
  • 意思決定が遅れたり、判断を誤ったりするリスクが高い

連結資金管理

  • 年度資金計画、月度資金繰り計画の作成がExcelベースで「多大な工数」
  • 予算と年度資金計画の「整合性」の確保が困難
  • 「資金計画、資金繰り計画の根拠がバラバラ」で、内容分析が困難
  • 流動性を確保するために、無駄な借入(余裕を持った借入)が発生

連結原価管理

  • 子会社の「原価把握」が困難
  • コストダウンの進捗モニタリングが困難
  • 内部利益を控除した「連結原価の集計」が困難
  • 為替、人件費等の経営環境の変動の影響額の分析が困難
  • 原価の信頼性が低く、「プライシング」「経営判断」に使えない

連結会計

  • 勘定科目や報告フォーマットが不統一で、データ収集・チェックに「多大な工数」
  • 連結会計用のソフトを導入しているが、「機能を十分活用できていない」
  • 業務精度が悪く、内部取引の照合で多額の差額が発生し、「多大な工数」
  • 制度連結は連結システム、月次業績把握はExcelで、「管理の二重化」が発生
  • 予算、見込み、制度連結でデータ粒度、ツールがバラバラで、管理に使えない

内部取引管理

  • グループ会社と請求書を毎月数百枚、メールやFAXでやり取りし「多大な工数」
  • 内部取引の照合、資金決済に「膨大な工数」
  • 連結決算の内部取引照合時に、「多額の突合差額」が発生

プロジェクト会計

  • 会計期間を超えた収益管理が困難
  • 法人を超えた取引や原価情報の管理が困難

連結業績管理

  • 各社からデータを収集しても、コードやフォーマットを変換しないと使えない
  • 収益、採算管理の基礎情報を収集することが困難
  • 管理すべき情報、KPIが決まっていない

統合マスター管理

  • 各社コードがバラバラで、コードの統一化が困難
  • 本社内でもシステム毎にマスターがあり、重複メンテナンスが発生
  • グループ統一コードを制定しても、変換テーブルを含め管理しきれない

実際のグランドデザインの場面でも、経営層から実務責任者(部・課長クラス)までヒアリングを行うと、数百の課題が抽出されます。短時間で課題を構造化し、取り組むべき改善テーマを決定していくことが、求められます。