背景

海外への生産シフトが進む中、海外製造拠点の原価を的確に把握していくことが製造業にとって極めて重要になっています。しかし、現実には以下の問題あり、原価管理がうまく機能していないケースが多くあります。

  1. 子会社の「原価把握」が困難

    原価情報は、ERPでは生産管理の中で管理されており、また、多通貨情報となるために、適切なレートで分析することが難しくなっているケースが多くあります。
  2. コストダウンの進捗モニタリングが困難

    製造拠点の原価情報を時系列で分析するツールが無く、分析が困難になっているケースが多くあります。
  3. 内部利益を控除した「連結原価の集計」が困難

    海外・国内で製造を分業体制で実施している場合、部品やユニット分品は移転価格で取引されます。内部利益を含んだ移転価格が買入部品費となるため、原価が正確に捉えられないケースが多くあります。
  4. 為替、人件費等の経営環境の変動の影響額の分析が困難

    為替相場、人件費等の経営環境が大きく変化するために、原価が下がったのはコストダウンの効果か、為替の影響かの判断が困難なケースがあります。
  5. 原価情報の信頼性が低く、「プライシング」「経営判断」に使えない

    原価情報は、プライシング(製品価格、移転価格)や経営判断(製品の採算性、収益性)の基礎になりますが、原価情報の信頼性が低く使われていないケースが多くあります。

連結原価管理の改革の狙い

グループ経営の視点から「原価実態の見える化」を実現するためには、会社の状況にもよりますが、改革を進めることにより、以下の狙いを実現することが期待されます。

  1. 原価把握方式の統一

  2. 国内外製造拠点の原価情報の見える化

  3. 国際分業生産品の連結原価の集計

  4. 変動要因(原材料、為替、人件費など)に対する原価影響算定

  5. 初期流動品、生産移管品の実際原価のモニタリング

連結原価管理のフレームワークと構築アプローチ

グループ経営を支える新たな連結原価管理の仕組み作りが必要となっています。

1.統合BOMをベースとした連結原価管理

ERPで生産管理を実施している場合、BOM(部品表)で構成部品、員数(使用部品数)、単価、チャージレート等を管理し、原価計算をしています。しかし、ERPでは会社を超えた集計はできません。
統合BOMを構築し、各製造拠点の原価情報を取込むことによって、拠点毎の多通貨の情報の見える化、さらに換算・積上計算をすることにより、連結原価の算出やシミュレーションが可能になります。

統合BOMをベースとした連結原価管理

2.連結原価管理構築のアプローチ

連結原価管理の目指すべき姿は、企業の業態や組織構造、原価管理の狙い、原価管理方式によって異なります。そのため、現状把握の上で、その会社の連結原価の「目指すべき姿」を定義し、実現化を行います。