背景

製造業の業態が所謂「箱売り」からビジネスの形態が変化し、サービス化しています。その中で、ハードウェアの売り切りから、ハードウェアの保守、ソフトウェアの販売・保守、役務提供など、1つの契約に基づき複数のグループ会社が関わって様々な活動が行われるケースが増えています。しかし、以下のような問題があり、契約単位の損益管理がうまく機能していないという状況があります。

  1. 会計期間を超えた収益管理が困難

  2. 法人を超えた取引や原価情報の管理が困難

プロジェクト会計の狙い

会計期間や法人を超えて損益や採算を管理する仕組みは、プロジェクト会計と呼ばれています。プロジェクト会計を実現するためには、会社の状況にもよりますが、以下の改革を進めることにより、以下の狙いを実現することが期待されます。

  1. 売上、原価把握方式の統一

  2. 1つの契約にもとづく「法人を超えた採算」の見える化

プロジェクト会計のフレームワークと構築アプローチ

プロジェクト会計の考え方自体は新しいものではなく、建設業、ソフトウェア業界、研究開発領域などで広く普及しています。ただ、法人を超えて統一的な仕組みを適用していく必要性が高まっているため、新たな課題と認識される状況が増えています。ERPによってはプロジェクト会計機能を持っているものもあります。しかし、ERPで会計や基幹業務をカバーしている法人に利用が限定されます。異なるERPやレガシー・システムを使ったり、同一のERPでも拠点ごとに導入したりしている場合には、プロジェクト会計の仕組みは、原則的には使えません。プロジェクト会計の仕組み作りが必要となっています。

1.プロジェクト会計のフレームワーク

プロジェクト会計の仕組みは、大きく分けて2つの方向性があります。1つは、自己完結型の仕組みです。建設業で多く採用されている工事管理の仕組みが代表事例です。契約管理、作業時間管理、購買管理、工事進捗管理など、その工事に関わる情報を工事管理の中で一元管理する仕組みです。もう一つは、情報集約型の仕組みです。内作ソフトウェアの原価集計、研究開発費の集計等で、採用されているケースが多くあります。プロジェクト・コード(契約番号等)として統一的なキーを付与した情報を、販売、購買、給与、経費等の関係システムから抽出し、再集計することにより契約単位の損益や採算を管理する仕組みです。
図表は、情報集約型のフレームとなっています。

プロジェクト会計のフレームワーク

2.プロジェクト会計構築のアプローチ

プロジェクト会計の目指すべき姿は、企業の組織構造、関係システムの状況、損益・採算の管理方式によって異なります。そのため、現状把握の上で、その会社のプロジェクト会計の「目指すべき姿」を定義し、実現化を行います。自己完結型の仕組みは、プロジェクト会計として具備する機能が多くなります。一方、情報集約型の仕組みは、関係システムへの統一キーの導入とインターフェースの構築が必要になります。