BBSフォーラム2022~組織がデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な「人財」と「品質」の在り方とは?~

セミナーレポート

BBSフォーラム2022~組織がデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な「人財」と「品質」の在り方とは?~

開催概要

日時:2022年11月16日(水) 13:30~17:30
会場:東京コンファレンスセンター・品川
主催:株式会社ビジネスブレイン太田昭和

BBSフォーラムを3年ぶりにリアル開催

お客様へ感謝の思いをお伝えするとともに、社会・経済動向を踏まえた有用な情報の提供を目的に開催しているBBSフォーラム。2022年のフォーラムは、新型コロナウイルスへの感染防止対策を講じたうえで、2019年以来となるリアル(対面)形式で開催しました。開会挨拶には、当社代表取締役社長の小宮一浩が登壇。これに続き有識者やお客様にご講演いただいた後、落語家の桂文楽師匠に恒例のBBS寄席を設けていただき、フォーラムは盛況のうちに終了しました。

開会挨拶に立つ当社代表取締役社長 小宮一浩
桂文楽師匠によるBBS寄席。演目は古典落語「天災」

PROGRAM

基調講演
両手遣いのイノベーション、激変する状況に対応し克服するための方法論

北 寿郎 氏

同志社大学 名誉教授

プロフィール

1976年NTT入社。2004年より同志社大学大学院ビジネス研究科教授を務め、2022年3月末に退職。教育・研究の傍ら、複数の学会の委員・役員、通信系企業の社外取締役などを歴任。名古屋大学大学院工学研究科修了、工学博士(名古屋大学)。

「既存事業の深耕」と「新規事業の探索」の両手遣いでイノベーションを推進

調講演では、同志社大学名誉教授の北寿郎氏より「両手遣いのイノベーション、激変する状況に対応し克服するための方法論」と題してご講演いただきました。
不確実なビジネス環境のなか、企業の持続的な成長を実現するエンジンとなるのが、イノベーションです。北氏は、「イノベーションは価値創造と組織マネジメントの2段階で考えることが重要」と指摘し、「価値創造」の方法論として「既存事業の深耕」と「新規事業の探索」を両立する“両手遣い”のマネジメントについて解説しました。
両手をうまく使いこなすため、北氏が既存事業の深耕に有効なアプローチ方法として挙げたのが、日本企業が得意とするPDCAと、新たに注目を集めているJob理論です。Job理論は、新製品や新サービスの開発の成功率を飛躍的に向上させる方法論。市場で満たされているニーズと満たされていないニーズを同時に把握することがポイントです。新規事業の探索では、OODA(Observe-Orient-Decide-Act)とEffectuationという2つの新しいアプローチを提示。OODAは欧米のスタートアップ企業がサービス創出に活用している手法で、周囲を観察し(Observe)、方向付けを行い(Orient)、注力点を決めて(Decide)、実行に移す(Act)というもの。Effectuationは、成功を収めた起業家に共通している思考プロセスや行動パターンを体系化した意思決定の方法論です。

ステークホルダー間で方向性を共有し、イノベーションを実現

続いて、北氏は「組織マネジメント」の方法論について解説。今求められる新しいリーダーシップのあり方は、カリスマ性ではなく、進むべき方向を示すビジョナリーと、示した方向性を関係者全員が納得できるように説明してともに行動するセンスメイキングの2つが、不確実さが増す時代において持続的な成長をもたらすと述べました。
さらに北氏は、価値創造と組織マネジメントで明確になった方向性を、「良心」というレンズを通して考えることが重要だと続けます。英語のConscience(=良心)の語源をたどると日本語とは異なり、その概念は「ともに知って価値観を共有する」こと。明確になったイノベーションの方向性を、従業員や株主、パートナー企業、さらには地域社会など、さまざまなステークホルダーと共有し、価値創造と組織マネジメントの整合性を担保して取り組んでいくことが重要だと強調しました。欧米ではこの取り組みがIntegrity(健全性)という言葉で重視されており、CIO(Chief Integrity Officer)を設置し、健全性の維持に注力する企業も増えているという動向にも触れて基調講演を終えました。

BBS講演
サステナビリティ経営 ~求められる社会的要請、開示ルールおよび対応策~

谷渕 将人

株式会社ビジネスブレイン太田昭和 取締役 常務執行役員

プロフィール

公認会計士/公認不正検査士/認定上級IPOプロフェッショナル。洛星高等学校、慶應義塾大学卒業後、太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)を経て現職。IPO、IFRS、JSOX、新会計基準導入、電子帳簿保存法対応、インボイス制度対応、内部監査支援や業務改善などの会計・内部統制コンサルティング部門を統括。

「サステナビリティ、ESG情報開示に対する近年の国内外の状況を解説

BBS講演には、当社取締役 常務執行役員 公認会計士の谷渕将人が登壇。「サステナビリティ経営~求められる社会的要請、開示ルールおよび対応策~」をテーマに講演しました。
まず谷渕は、サステナビリティ経営への流れとして、その背景にあるSDGsの浸透やESG投資の拡大、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言、コーポレートガバナンス・コードの改訂など、近年企業に求められている社会的要請を整理しました。また、就職活動に取り組む学生が企業選びの際にSDGsと事業活動の関わりを重視する傾向にあるというアンケート調査の結果や、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが企業の資金調達に影響を及ぼしていること、さらには取締役や従業員の評価にESGの観点を盛り込む企業が増えていることなども説明しました。
こうした社会的要請の高まりを受け、企業にはサステナブルな活動の実施だけではなく、ESGや非財務の取り組みに関する情報の開示も求められてきています。そこで、国内外で進む情報開示ルールの内容について整理し、とくに2021年6月に東京証券取引所が実施したコーポレートガバナンス・コードの改訂と、2022年6月に金融庁の金融審議会が公表したディスクロージャーワーキング・グループ報告書について内容を説明しました。

開示ルールに基づく体制構築に向けたプロセスとポイントを紹介

このように情報開示ルールの整備が進んでいることを受け、谷渕はESG情報の開示体制構築に向けたプロセスの全体像――(1)現状分析→(2)マテリアリティ(重要課題)・KPIの特定→(3)業務プロセスへの反映→(4)開示・定期レビューを提示するとともに、各プロセスでのポイントと留意点も説明しました。
そのなかでマテリアリティについては、「ESGの観点から継続的かつ中長期的に企業価値向上を図るうえで、企業が優先して取り組むべき重要な課題」と定義。製造業でマテリアリティに挙げられることが多いCO2排出量の削減を例に、特定する際の考え方を解説しました。加えて、マテリアリティ特定時の参考として、米国SASB(サステナビリティ会計基準審議会)が業種ごとに推奨されるマテリアリティを具体的に公表しているといった情報も紹介しました。
最後に、サステナビリティ経営の推進には、これまでの財務情報だけでなく、非財務情報も融合した新しい経営管理基盤を構築し、経営に必要な情報を一元管理する仕組みと、社会的要請の内容や開示ルールの変化にも柔軟に対応できる柔軟性を備えることの重要性を強調。その実現に向け、BBSもお客様を積極的に支援していきたいと抱負を述べ、講演を締め括りました。

お客様講演
ミサワホームの挑戦 ~デジタルを活用した新しい働き方~

堤内 真一 氏

ミサワホーム株式会社 取締役 常務執行役員

プロフィール

1987年トヨタ自動車入社。海外部門、人事総務部門などを長く担当。2017年ミサワホームの執行役員に就任。2019年には取締役に就任し、管理部門および海外事業を統括する一方、ミサワホーム全体の改革を推進。現在は、海外事業、介護事業、管理業務、CS活動と多岐にわたる事業・活動の全般を担当。

働き方における業界のリーディングカンパニーを目標に
第一次働き方改革を推進

お客様講演では、ミサワホーム様で取締役 常務執行役員を務める堤内真一氏より、「ミサワホームの挑戦~デジタルを活用した新しい働き方~」として、取り組まれてきた働き方改革の歩みを紹介していただきました。
冒頭、堤内氏は同社の多様な事業や近年のトピックスを紹介。続いて、2018年から2年間にわたって推進した第一次働き方改革に話を移しました。この取り組みは、業務プロセスから制度、健康管理などを含む総合改革を実施し、すべての社員が生産性を高めていきいきと働き、働き方で業界のリーディングカンパニーを目指して進められたものです。
その特徴として堤内氏が挙げたのは、社長を巻き込むとともに、全社から年齢、性別、役職に関わりなく60名の兼任スタッフを選任。全員が自らの働く環境から改革テーマを提案し、活動を進めたことです。これは、プロジェクトの開始にあたって他社の働き方改革を数多く調査・分析して、社員の声を吸い上げる重要性などを成功法として導き出したことによるもの。こうした取り組みによって、いち早くテレワークを導入し、勤務時間を年間6万時間以上も短縮するとともに、資料作成へのRPA導入で作業時間を約2,000時間も削減。「健康経営優良法人」(通称ホワイト500)にも認定されました。

デジタルの積極活用で
より効率的にいきいき働ける環境へ

2020年に入ると新型コロナウイルス感染症が猛威をふるったことから、「Withコロナ 新しい働き方」をテーマに設定。Withコロナ時代を戦い抜く新しい働き方の実現に向けた改革を進めてきました。まずは、新しい働き方の基盤となる社員のITスキル・リテラシーを高めるため、社内ITスキル標準「ミサワデジタルスタンダード」を策定して教育を推進。全社員のデジタル活用能力の向上を図ってきました。また、Withコロナの働き方の基本となる非対面に対応した「ミサワマネジメント」の型としてデイリーマネジメントと評価マネジメントを確立し、周知徹底に注力。さらに、生産性の向上をめざして業務の標準化やペーパーレス化、電子印鑑の導入、フリーアドレスの採用なども行い、会社全体で業務時間は約26万時間、経費は年間約1億円も削減されています。
2021年からは、さらなるデジタル人財の育成と、デジタルを活用した生産性向上を業務部門主導で進め、AI活用による業務の効率化にも積極的に取り組んでいます。この取り組みも着実に成果を上げており、例えば従来は電話で対応していた社員からの問い合わせにAI FAQを導入することで、現時点で2割の業務削減が実現しています。
堤内氏は、こうした成果や工夫点に言及しつつ、「社員がリラックスしてかつ真剣に仕事をできる風土づくり」こそが大きな目標であると熱く述べて講演を結びました。