BBSフォーラム2023~SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)時代の人「財」を考える~

セミナーレポート

BBSフォーラム2022~組織がデジタルトランスフォーメーションを実現するために必要な「人財」と「品質」の在り方とは?~

開催概要

日時:2023年11月15日(水) 13:30~19:00
会場:東京コンファレンスセンター・品川
主催:株式会社ビジネスブレイン太田昭和

人「財」をテーマに、3名のスピーカーが講演

2023年11月15日、「BBS FORUM 2023~SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)時代の人「財」を考える~」を開催しました。当日は当社代表取締役社長 小宮一浩の開会挨拶に続き、SXの基盤となる「人財」をテーマに3名のスピーカーによる講演を企画。その後、落語家 笑福亭里光師匠の高座や懇親会も行い、お客様とのコミュニケーションを深めるフォーラムは盛況のうちに終了しました。

  • 笑福亭里光師匠によるBBS寄席。
    古典落語に加え、情報セキュリティを題材にした新作落語も披露

  • 開会挨拶に立つ当社代表取締役社長 小宮一浩

  • 会場の受付ブース。多くのお客様にご参加いただきました

  • 懇親会で乾杯の音頭をとる当社取締役 専務執行役員 井上典久

  • 4年ぶりの開催となった懇親会ではお客様と当社社員が交流

  • PROGRAM

    <基調講演>
    勝利に導くチームマネジメントとコミュニケーション

    辻 発彦 氏

    埼玉西武ライオンズ 前監督

    プロフィール

    佐賀県出身の元プロ野球選手・元監督。佐賀県立佐賀東高等学校を卒業後、社会人野球・日本通運を経て、1983年ドラフト2位で西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)に入団。16年の現役生活後、2000年からはヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)、中日ドラゴンズでそれぞれコーチと2軍監督を経験。2017年から2022年まで6年間、埼玉西武ライオンズで監督を務め、2018年、2019年と2年連続でパシフィック・リーグ優勝に導く。

    厳しい環境下で努力を続けた現役時代

    基調講演は、プロ野球で選手、そしてコーチ、監督として活躍した辻発彦氏から、育成と勝利をともに実現するチームマネジメントとコミュニケーションをテーマに、ご自身の経験をもとにお話しいただきました。
    まず、プロ入り以前の自身を振り返った辻氏。高卒で入団テストを経て社会人野球・日本通運の一員となった時は、“奇跡”だと感じるほど周囲のレベルの高さに驚いたそうです。そのなかでも死にものぐるいで練習を積み、3年目に俊足を武器にレギュラーの座をつかんだ経験から「自身の能力を見極め、向上心を忘れず努力することを学んだ」と語りました。
    数年後にプロ入りする際は、「厳しい環境であること」を理由に西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)を選択。広岡監督(当時)の厳しい指導のもとで鍛えられた若手時代を「プロとしての基礎をつくる時期だった」と振り返りました。その後チームを率いた森監督(当時)は、選手の意向に丁寧に耳を傾ける一方で、選手同士が話し合い考えるチームマネジメントを重視したといいます。16年にわたり現役として活躍し、複数回のリーグ優勝・日本一を経験した辻氏は、自身を成長させチームに貢献するには「自らを厳しく律し、自分で考えて動くこと」が欠かせないと語りました。

    選手の考えを尊重するマネジメント手法

    数年間のコーチ経験を経て、2017年埼玉西武ライオンズの監督に就任した辻氏は、当時低迷していたチームを再建すべく、先入観なく選手を見て、個性を把握することから始めたといいます。そのうえで重視したこととして「選手と同じ目線に立つこと」「自分の目で見たものだけを信じ、判断すること」を挙げました。
    続いて講演では、マネジメントのポイントとして「コミュニケーション」の重要性も強調。選手一人ひとりをつねに観察し、気付いたことがあれば些細なことでも対話の機会を持つ、選手がミスをしても頭ごなしに叱責するのではなく、まず考えを聞き、すり合わせる。このように選手たちだけでなくコーチ陣に対しても同様のスタンスで接し、当人の意見を尊重することが自律的な成長につながるとの考えを示しました。
    最後に辻氏は、「さまざまな指導者のもとで現役時代を過ごしたが、自分は自分でしかない。自分らしさを貫いたことで良い結果になった」と6年間の監督生活を総括。マネジメント側に必要な思考のヒントを示し、講演を終えました。

    <BBS講演>
    人財トランスフォーメーションの勘所
    ~サステナブルな組織構築に向けて~

    久茂田 善晃

    株式会社ビジネスブレイン太田昭和
    理事 BPO統括本部 BPO業務企画部 部長

    プロフィール

    兵庫県立長田高等学校、慶応義塾大学経済学部卒業。大手製造業の経理部門、外資系コンサルティングファーム、大手外食チェーンの業務センター長などを経て2013年に当社入社。当社では主にBPOビジネスに従事。大手企業の財務・経理、給与などに関するBPOプロジェクトのPMや、BPO事業部長を務め現職。

    人財をめぐる社会背景と企業に求められる対応を解説

    BBS講演には、当社理事でBPO業務企画部の部長を務める久茂田善晃が登壇。「人財トランスフォーメーションの勘所~サステナブルな組織構築に向けて~」と題して講演を行いました。
    初めに久茂田は、近年企業経営において人財の重要性が改めて注目されている背景として3つのポイント――すなわち、「VUCAの時代であること」「人口・労働力の減少」「人的資本に対する情報開示の義務付け」を挙げました。そのなかで、これまでのやり方が通用しない、変化の激しい時代において成長する人財の条件や成長を促す秘訣を紹介。また、人口減少社会で企業がサービスレベルを維持するためには、働き方改革やワークライフバランスの実現が重要になると指摘しました。併せて、人財は企業にとっての「資産」ではなく、資産を生み出すための「資本」である、という捉え方が定着しつつあることを説明しました。
    さらに久茂田は、「こうした状況に企業が対応するためには、新たな価値を生み出し続ける“サステナブルな組織”への変革が不可欠」と指摘。そのうえで、“サステナブルな組織”への変革に向けては、つねに情熱を持ち、イノベーションを引き起こす“課題解決型人財”の確保が重要であり、各企業はそうした人財の採用・育成・定着化サイクルを構築する必要がある、とコンサルタントとしての自身の考えを述べました。

    “人財トランスフォーメーション”を実現するための要点を紹介

    続けて、経営戦略やパーパス・理念、時代背景などから定義した「求める人財像」へと人財の変革を促すこと=サステナブルな組織を実現するための“人財トランスフォーメーション(人財X)”について説明しました。“課題解決型人財”のエンゲージメントを高めるために、「求める人財像」を明確化し、採用・育成・定着化サイクルのもとで「心」(意識改革)、「技」(制度改革)、「体」(行動改革)の3つの改革が必要という通説を紹介。なかでも最も難しいのは行動改革であると言及し、社員はルーティン業務をDXやBPOによって削減し、戦略業務へとシフトすることがエンゲージメントとイノベーション力の向上につながると語りました。
    講演の最後は経理財務などバックオフィス業務のBPOと人財交流で人財Xを加速させるソリューション「BPX(Business Process Transformation)」の概要を説明。BBSはその担い手“BPOプラットフォーマー”をめざすというビジョンを語り、講演を終えました。

    <お客様講演>
    経営戦略と連動する人財育成について

    松﨑 毅 氏

    キッコーマン株式会社 常務執行役員 CHO

    プロフィール

    1981年にキッコーマン株式会社入社。大阪支店・京都営業所で10年間にわたり営業経験を積み、人事部門へ異動。2008年に人事部長に就任後、人事制度、人財育成などの諸改革を主導。2013年には執行役員に就任。2017年、常務執行役員 CHO(最高人事責任者)に就任し、現在に至る。

    人財戦略は、経営戦略・経営理念の実現のためにある

    お客様講演は、キッコーマン様で常務執行役員 CHO(最高人事責任者)を務める松﨑毅氏から、「経営戦略と連動する人財育成について」と題して、同社における人財戦略を紹介していただきました。
    冒頭、グループの事業概要に続いて、同社の人財戦略の骨格を説明。人財戦略は経営戦略、ひいては経営理念を実現するためのものであり、経営戦略と連動していることが不可欠であると語りました。加えて、同社が人財戦略の推進にあたって重視している事項について言及。「グローバル経営・海外展開への寄与」「多様な専門家の意図的な育成」「社員の自律的キャリア形成の支援」「ダイバーシティの推進」という4つの観点を挙げ、これらを基礎として人財育成を進めていると説明しました。
    松﨑氏によると、人財戦略の策定は、(1)基幹ポスト・人財要件の設定→(2)人財ごとの能力やスキルの棚卸し→(3)人財の確保・育成・配置という順で進行したといいます。とくに(3)人財の確保・育成・配置においては、「社員一人ひとりが納得できるよう会社の考えを伝える」ことを重要なポイントとして指摘しました。また、必要な人財を確保し続けるためには、新卒者の育成だけでなく、専門性を持つ人財のキャリア採用も積極的に検討すべきであるという考えも示しました。

    「プロ人財」「グローバル人財」の育成に注力

    講演の後半は、同社の経営人財育成の取り組みとして、「未来創造塾」(選抜型研修)や「CDP(Career Development Program)制度」について紹介しました。前者は中堅~管理職層を対象とした2段階の研修プログラムで、経営トップが塾長となり、次代の経営人財候補者にキッコーマンのDNAを伝承するもの。後者は、若手社員が自律的に能力・経験を身に付けられるよう、ローテーションや面談、研修などを計画的に実施するもの。これらを中心に多様な仕組みを整備し、同社が求める「プロ人財」「グローバル人財」の育成に注力していることを説明しました。
    最後は、こうした戦略に加えて個々の能力を活かす体制と環境づくりも不可欠であるとの考えを述べた松﨑氏。ダイバーシティ&インクルージョンや人権への取り組みはもちろん、働き方改革についても社員一人ひとりと向き合いながら対応していかなければならないと語り、講演を締め括りました。