対談

株式会社関電工
代表取締役社長
田母神 博文氏

「人間第一」を原点に、グリーンイノベーション企業への変革を進める

株式会社関電工
代表取締役社長
田母神 博文氏

建築設備や電力・情報通信設備の工事を通じて、暮らしと社会インフラを支えてきた関電工。
創立100周年を見据え、社是「人間第一」を原点にグリーンイノベーション企業への変革を進めています。
同社代表取締役社長の田母神博文氏をお招きし、AI・データ活用や人的資本強化の取り組みについて、当社代表取締役社長の小宮がお話を伺いました。


BBSでは従前より人材を最も重要な経営資源だと捉え、"人財"と表記しています。

対談者様プロフィール

田母神 博文

1986年、株式会社関電工に入社。経営企画部長、支店長などを経て、最高戦略責任者(CSO)兼最高人事責任者(CHRO)を歴任。2025年4月から現職。

社会を支える100年企業へ
グリーンイノベーションを推進する

小宮
社長に就任されて約1年が経ちました。就任を前に関電工をどのような会社にしていきたいか、じっくり考える時間もあったそうですね。
田母神
社長就任が社外に公表されるまでの約1カ月は、誰にも話すことができませんでした。その間、自分が社長になったら何をすべきか、社員に何を伝えたいのかを考え続けました。当社は社是に「人間第一」を掲げていますが、社員一人ひとりを大切にしながら、安全管理や顧客からの評価、技術、人材など、あらゆる面で業界No.1をめざしたいと考えています。
小宮
その思いを、「アン・シン・ヘン・コム」というキーワード、4つの柱に込められたのですね。
田母神
はい。「アン」は安全・安心、「シン」は信頼、「ヘン」は変革、そして「コム」はコミュニケーションを表します。社員が安全に、安心して働き続けられる環境をつくること、お客様や取引先、協力会社をはじめとするステークホルダーの皆様に誠実に向き合うこと、また、事業環境が変化するなかでも、現状に満足せず変わり続けることを大切にしています。なかでもコミュニケーションは、組織の土台だと考えています。困っていることや、起こり得る問題を、いつでも上司や同僚に話せる、そうした会話が日常的に交わされる「相談ごとであふれる会社」にしたいと考えています。

総合設備企業としての強みを活かして
脱炭素とレジリエンスに貢献する

小宮
4本柱の1つに「ヘン」を掲げていらっしゃいます。2044年の創立100周年を見据えて、今後どのような変革を進めていかれるのでしょうか。
田母神
当社がめざしているのは、脱炭素社会やレジリエンス社会の実現に貢献する「グリーンイノベーション企業」です。お客様の設備や社会インフラを支えてきた技術とノウハウを活かして、時代の変化に応じた新たなソリューションを提供していきたいと考えています。
小宮
今お話しいただいたように、御社は建築設備と、電力設備や情報通信設備などの社会インフラの双方を手がけています。総合設備企業として、その両面に対応できることが大きな特長ですね。
田母神
データセンターを例に挙げると、建物内の設備だけでなく、安定した電力を供給するためのインフラ整備も必要になりますが、当社は建築設備と電力インフラの双方に対応できます。今後は、設備をつくるだけでなく、運用改善やリニューアルの提案にも力を入れていきます。その一例が、エネルギーマネジメントシステム「WATTMILL®」です。お客様の電力使用状況を可視化して、データに基づく運用改善や設備改修の提案につなげています。
小宮
設備やインフラを新たにつくるだけでなく、長く使い続けるための支援も重要になるということですね。
田母神
そう認識しています。日本国内では建物や社会インフラの老朽化が進んでいます。既存の設備の価値を保ちながら、いかに長く使い続けるか。これまで培ってきた技術やノウハウを活かして、保守・メンテナンスやリニューアルにも取り組んでいきます。コンサルティングから設計・施工、メンテナンスまで一貫して対応できる点を活かして、お客様の課題解決を長期的に支えていきたいと考えています。

現場業務の生産性向上へ
AIやデータの活用で人の力を引き出す

小宮
建設業界でも人手不足は深刻だと思います。生産性の向上は避けて通れないテーマですね。
田母神
おっしゃるとおりです。その課題への対策として、現場外でできる仕事は現場から切り出し、エンジニアでなくても担える業務は別の人材が担当する。こうした分業をまず進めています。
小宮
限られた人材の力を最大限に引き出すためには、一人ひとりのスキルや稼働状況を把握することも必要になるのではないでしょうか。
田母神
近年、大型案件が増えており、工事ごとに必要なスキル・人数・配置時期を見極め、適切に組み合わせることがより重要になっています。設備工事は、一人のエンジニアだけで完結するものではありません。個々の社員の能力を把握して、案件に応じて配置する必要があります。また、足元の案件だけでなく、数年先に始まる工事も含めて考えなければなりません。将来、どの時期にどのようなスキルを持つ人材が必要になるのか。複数の案件が重なった時に、どの程度の施工力が求められるのか。そうした状況を可視化することは、経営判断にも直結します。
小宮
まさに、当社がお手伝いしている「施工HRマネジメントプラットフォーム」にもつながるお話ですね。また、人材の配置とともに、営業活動から得られる情報も将来を見通すうえで重要になるのではないでしょうか。
田母神
施工HRマネジメントプラットフォームの構築は、人材配置の高度化に直結する取り組みです。営業情報については、受注や売上の見通しを早期に把握するうえで重要です。どのような案件が動き始めているのか、受注につながる可能性はどの程度あるのか。営業活動から得られる情報を蓄積して、受注や売上の見通し、施工要員の配置などと照らし合わせながら、判断していく必要があります。データは、集めるだけでは意味がありません。必要な情報を整理・分析して、次の判断に活かす。2030年に向けて、データに基づく経営をさらに進めていきたいと考えています。
小宮
御社とは、2000年前後の工事情報管理システムや経理システムの導入をはじめ、経理業務のご支援、各業務システムの設計・開発から運用・保守などを通じて、長年にわたりご一緒してきました。当時から、業務のあり方を見直しながら、システム整備を積極的に進めてこられたのですね。
田母神
当時は、間接業務を集約する事務センターの立ち上げと、工事情報を管理するシステムの開発を同時に進めていました。組織をつくりながら、新たなシステムを導入して、業務そのものも変えていく。会社人生のなかでも、最も大変な時期の一つでした。ただ、そこで業務の流れを見直した経験は、現在のデータ・AI活用や業務の変革にもつながっています。引き続き力をお借りしながら、業務変革に取り組んでいきたいと思っています。
小宮
技術継承の面でも、データやAIは大きな助けになると思います。コスト削減を主目的とするのではなく、人の判断や行動を支える補助的な力として活用することが大切ではないでしょうか。
田母神
当社でもCopilotの導入を段階的に進めており、今年度中に1,500名規模への拡大を計画しています。AIの活用についていえば、これまでに蓄積された対応事例を活用して、若手社員が作業時の注意点を確認できる仕組みの整備を進めています。将来的には映像で注意喚起ができれば、現場の安全はさらに高まるはずです。
小宮
AI活用を進めるうえでは、情報セキュリティやガバナンスの担保も求められます。基盤づくりを支えながら、より効果的な活用方法をご一緒に探っていければと思います。

人への投資から始まる
「幸せな成長」のサイクル

小宮
人の力を引き出すという点では、人への投資も欠かせません。御社ではどのようにお考えですか。
田母神
中期経営計画では、「従業員とともに幸せな成長を果たす」と掲げています。先に会社が成長するのではなく、まず処遇や福利厚生、成長機会に投資する。それが一人ひとりの意欲を高め、新たな提案や業務の質の向上につながり、会社も成長する。このサイクルが回り始めた実感があります。
小宮
人手不足が進むなかでは、採用だけでなく、育成や配置も含めて、一人ひとりが力を発揮できる環境を整える必要がありますね。
田母神
そのとおりです。採用では、技術系の学部や学科にとらわれず、多様な人材を迎えるとともに、キャリア採用にも力を入れています。また、入社後の育成も重視しています。かつての建設業界では、「上司や先輩の背中を見て学ぶ」という考え方もありましたが、これからは体系的な研修を通じて、必要な技術や知識を身に付けてもらうことが大切です。また、採用、育成、配置は、それぞれを別々に考えるものではありません。一人ひとりが持つ経験やスキルを把握して、それを活かせる場所で活躍してもらう。そうした環境を整えることで、人の力を最大限に引き出していきたいと考えています。
小宮
社員の皆さんの意識にも変化はありますか。
田母神
最近は、「関電工をもっと世の中に知ってもらいたい」という声を聞くようになりました。マズローの欲求段階にも通じる話ですが、処遇改善や成長機会の充実を経て、社員の意識が一段高いところへ変わってきた。そう実感しています。当社では、自分たちの強みや使命を共有しようと、各支店の代表メンバーが「関電工とは何者か」を問い直すブランディング・プロジェクト「One Denko Project」を約1年にわたり推進していますが、この成果は、次期中計にも反映していく考えです。
小宮
当社も人財力の強化に段階的に取り組んできました。処遇改善から始めて、人財像を明確にした人事制度と評価の連動、そして今年度からは人的資本の可視化に着手しています。人財の可視化を単なる情報開示にとどめず、経営戦略と連動させることで、将来的に当社の価値創造・組織文化の形成へとつなげていきたいと考えています。
田母神
異なる会社の考え方や仕事の進め方に触れることは、自社を見つめ直す好機になります。人材交流も含め、互いに学びながら関係をさらに深めていきたいですね。
小宮
本日は貴重なお話をありがとうございました。今後ますますのご発展を祈念するとともに、さまざまな領域で引き続きご一緒できることを楽しみにしております。