サステナビリティ情報開示:SSBJハンドブックの概要と実務上の影響(2025年8月)―気候関連シナリオ分析―

本コラムの要点

  • SSBJ基準はシナリオ分析の実施方法について開示を要求している(=結果の開示は要求されない)
  • 実務上はIEAやIPCCのシナリオが活用されると考えられる
  • シナリオ分析は気候レジリエンスの評価以外のサステナビリティ関連財務情報の作成にも役立つ

はじめに

2025年8月29日にSSBJ事務局より公表されたSSBJハンドブック「気候レジリエンス(2)気候関連のシナリオ分析」について文書の概要と実務対応を解説します。

1.文書の概要

気候関連開示基準は気候レジリエンスの評価を気候関連のシナリオ分析に基づいて実施することを要求するとともに、シナリオ分析がどのように実施されたかにかかる以下の開示を求めています。一方、どのようなシナリオの使用が想定されるのか、及び、時間軸の考え方については定められていません。

  • インプット
    • 使用されたシナリオ
    • 時間軸
    • 事業の範囲
  • 主要な仮定
  • シナリオ分析が実施された報告期間

上記について、本件SSBJハンドブックは「使用されるシナリオの例」や「時間軸の想定」、及び、「設例・開示例」を提供しています。

2.実務影響

シナリオ

SSBJ基準は「事業の性質及び所在地並びに企業がさらされている物理的リスク及び移行リスクを含む企業の事実及び状況に整合したシナリオ」を使用することとしていますが、本件文書はこれに該当する具体的なシナリオとして以下の2つを挙げています。

  • IEA(国際エネルギー機関)
    • NZE:Net Zero Emissions by 2050 Scenario
    • STEPS:Stated Policies Scenario
    • APS:Announced Pledges Scenario
  • IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
    • SSP1-1.9 シナリオ
    • SSP1-2.6 シナリオ
    • SSP2-4.5 シナリオ
    • SSP3-7.0 シナリオ
    • SSP5-8.5 シナリオ
  • 実務構築上の留意点:例えば、「1.5℃(NZE/SSP1-1.9)/2.0℃シナリオ(APS/SSP1-2.6)」と「4℃シナリオ(STEPS/SSP5-8.5)」の両極のシナリオを想定して分析を行うことが考えられます。

時間軸

シナリオ分析の時間軸は企業経営の時間軸(中期経営計画等の時間軸)と同じである必要はありません。実務上は、気候変動を想定した一定の時間軸(例:2030年/2050年)に基づいて気候関連のシナリオ分析を実施することが多いと考えられます。

おわりに

気候関連のシナリオ分析は「気候レジリエンスの評価」のために実施することが要求されていますが、当該分析は「リスク及び機会の識別と評価」「財務的影響の予想」「低炭素経済への移行計画」にも役立ちます。つまり、シナリオ分析を開示要求への対応のための道具と捉えるのではなく、サステナビリティ関連財務情報の各項目をつなぐハブのようなものとして認識しておくことがつながりのある情報の作成に必要です。

※当コラムの内容は私見であり、BBSの公式見解ではありません。