人事制度構築支援
「大卒初任給40万円」
ついにここまで来たか、という思いで新聞記事に目が留まりました。
若手人財の獲得競争が激化するなかで、新規学卒者の給与水準は大きく引き上げられる傾向にあります。
人財獲得競争が過熱する金融業界を中心に軒並み30万円を超える初任給が発表されていますが、この水準は中小企業の30代後半社員の賃金レベルに相当します。
3月17日に公表された厚生労働省の2024年「賃金構造基本統計調査」の結果によると、大学卒の新規学卒者の初任給は前年よりも4.6%上昇し248,300円、大学院卒で4.1%増の287,400円となりました。失われた20年といわれる期間、20万円前後で止まっていた初任給は人財不足・賃上げの流れのなかで一気に増額に動き出した感がありますが、皆さんの会社はいかがでしょうか。
初任給の見直しは、賃金テーブル全体の見直しに及ぶ話となるため、中長期的な観点から検討する必要があります。
すぐに気になるのは直近数年内に入社した先輩社員を追い越してしまう格差の是正となりますが、若手人財確保に向けた急激な初任給の上昇は、中堅社員、管理職クラスにまで大きな影響を及ぼすものとなります。
先に紹介した賃金構造統計調査によると、大卒入社社員の40歳~44歳の平均賃金が406,200円、役職者だと係長級の所定内給与額の平均が385,900円となっており、40万円という初任給は、勤続20年以上で係長級の社員と肩を並べる水準ということになります。
多くの会社が、中堅社員に昇格した時のメリットとして給与額をアップさせる昇格昇給額を設定していますが、入口での給与の引き上げは、中堅社員まで成長した際の給与面でのメリットを後退させることにつながります。新卒社員と中堅社員の給与レンジが重複するような場合、新たに中堅社員昇格時の昇給メリットをどう出すのかを検討する必要があります。
また、若手社員のリテンションのためには、管理職あるいは専門職クラスとなった場合の給与レンジの魅力も必要となります。企業ごとに経営ビジョンや経営戦略と連動させて、めざすことのできるキャリアを明確化したうえで、上位者の賃金も賞与も含めた年収ベースでどう魅力を出していくのかが重要なテーマとなります。
毎年の給与改定も、高水準で獲得した人財であれば、年功的に上げるのではなく貢献度に応じたメリハリを付けていくことが重要です。同じく賃金構造基本統計調査によると、対前年の増減率は全体平均で3.8%であったのに対し、20代社員の増減率は3.5%前後と下回る結果となっています。高水準で確保しても、その後の昇給に苦慮している企業も少なくないのではないでしょうか? 初任給アップが続くなかでも依然として入社3年後の離職率は3割を超えている実態があります。初任給引き上げと同時に、会社として若手社員に求める期待役割自体も明確にし、その後のキャリアパスや昇給の仕組みを伝えたうえで、しっかりと評価を行う仕組みが必要ではないでしょうか。
初任給の見直しと同時に昇給の仕組みも検討することをお勧めします。