人事制度構築支援
大手外食チェーンが、店長の年収を最大1,000万円超とする新たな人事制度を導入したそうです。
小売・飲食業だけでなく、医療機関の受付、行政窓口、金融機関のカスタマーサポートなど、さまざまな職場で対人業務に携わる人財の定着が課題となるなか、現場の裁量を広げ、処遇を改善することで優秀な人財の確保・定着をめざす動きといえるでしょう。
実際、厚生労働省のデータでも、接客・販売職を中心とした対人業務の有効求人倍率は依然として高止まりしています。こうした人手不足は、サービスの質や業務の継続に影響を与えかねない深刻なリスクです。
では、なぜ人が集まりにくいのでしょうか。労働時間や給与といった条件面を含めて、「その仕事が十分に評価されていないのではないか?」という問題があると思われます。
接客や受付、コールセンターの業務は、学生時代に類似のアルバイト経験があることも影響し、「社会人になってもあまり業務内容が変わらずに成長を感じにくいため、誰でもできる仕事」と捉えられる傾向にあります。また、総合職と区別され、限定正社員やサポート職として扱われるケースも多く、キャリアの広がりや処遇面での格差が生まれてきました。
しかし、実際の現場では、言葉にならない要望をくみ取り、状況に応じて柔軟に対応する高度な判断力や共感力が求められます。AIチャットやセルフレジの導入が進んでも、相手の表情や声のトーンを察して対応を変える、人に寄り添う対応は、やはり人にしかできない役割です。サービスの満足度や企業の信頼性を左右する場面では、「誰がどう関わるか」が重要な意味を持ちます。
つまり、こうした対人業務は、実は高いスキルを要する専門職でもあるといえるでしょう。実際、窓口業務を専門職として再定義する大手金融機関の事例も出てきています。
この価値ある仕事をどう評価するか。
近年では、接客の質やCSスコア、クレーム対応、後輩育成など、定量・定性の両面から評価しようとする動きが広がりつつあります。冒頭で紹介した外食チェーンでも、売上に加え、店舗サービスの改善や来店促進の工夫などを評価に加えることで、成果主義によるやりがい創出を図っているとのことです。
ただし、成果主義を導入するうえでは注意も必要です。目標が数値に偏ると、現場が疲弊してしまうおそれがあります。だからこそ、「何を評価し、どう育てるか」を見据えた制度設計が重要になります。
「誰でもできる」と思われてきた仕事を、「誰にでもできない価値ある仕事」として再定義し、制度で支え、見える形で評価・処遇する。その積み重ねが、現場で働く人の努力を正当に報い、持続可能な人財確保へとつながっていくのではないでしょうか。
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