Z世代が突きつける! 今、人事制度アップデートが求められる理由

近年、働く価値観そのものが静かに、しかし確実に変容を遂げています。

(株)労務行政のWEB労政時報(2025年11月14日)では、Z世代の特徴として「上昇志向の弱さ」「仕事と私生活の峻別」「承認や関係性の重視」が示され、日本経済新聞(2025年11月23日)でも、約35%が週休3日を希望するという“無理せず・安定”志向が報じられました。
こうしたデータは、従来の「昇進」「給与」「長時間の努力」などを前提とした制度が、若年層の動機付けとしては十分に機能しなくなっていることを意味します。とくにZ世代は、制度上の序列や上司の評価よりも、自律性・成長実感・納得感といった“心理的な価値”を重視する傾向が強まっており、人事制度が果たす役割に変革を迫っています。

制度による動機付けの本質は、仕組みそのものではなく、“制度が社員にもたらす心理的体験”にあります。心理学では、内発的動機付けを高める要素として、

  1. 自律性(自分で選べる、任されている感覚)
  2. 有能感(成長が見える、評価されている実感)
  3. 関係性(信頼・承認・対話)

の3つが挙げられています。制度がこの3要素をどれだけ支えられるかが、動機付けの質を大きく左右します。

例えば、週休3日などの選択型働き方制度は自律性を高めます。また、専門職制度を明確に打ち出すことは有能感を強化し、キャリアの見通しを示すことができます。評価制度は、結果だけでなく行動や成長プロセスを丁寧に扱うことで、関係性と納得感を育てる仕組みとなります。
さらに、嘱託社員や非正規社員を含むすべての層に対して、役割や評価基準を明確にし、公平で透明性のある処遇を整えることが欠かせません。基準が明示され、努力が正しく評価される環境こそが、安心と意欲の双方を支えます。

加えて、制度の効果を最大化するうえで忘れてはならないのが、管理職の役割です。どれほど優れた制度を整えても、現場での説明不足やフィードバックの質がともなわなければ、制度が生み出す心理的体験は弱まってしまいます。社員が「自分は大切にされている」「期待されている」と感じられるかどうかは、上司の関わり方に大きく依存します。制度と運用、そして管理職のコミュニケーション力が三位一体で機能してこそ、本来の動機付けが実現します。

働く価値観が多様化する今、制度の役割は「公平なルールを示すもの」から、「社員が働き続けたい理由を見付けることのできる環境づくり」へと移り変わっています。制度の見直しは単なる制度変更ではなく、“社員が力を発揮したくなる状態を設計すること”そのものです。この視点に立ち、今後の制度改革を進めていくことが、組織の可能性をさらに広げる鍵になると考えます。