人的資本経営支援サービス
2023年3月末以降に終了する年度の有価証券報告書において、人的資本情報についての開示が義務化されています。そこで今回、各社の開示の全般的傾向を、記載の量的な側面と内容的な側面について、本件に関してすでに発表されているレポートなども参考にしながら、そのポイントを簡潔に紹介したいと思います。
まず、各社の有価証券報告書中の人的資本に関する記載の量についてですが、日本生産性本部から8月2日付で「2023年3月末決算企業の有価証券報告書『人的資本開示』状況(速報版)」というプレスリリースが出ています。これによると、東証プライム企業(1,225社)のうち、人的資本に関する記述量(テキスト文字数)は約1,000~1,500字が最多(プライム企業全体の約20%)、平均2,095字、約500字~8,000字の範囲で分布していると報告されています。これをページ数に換算すると、各ページには文字だけでなく一定の図表も記載されていることを考慮すると、人的資本に関して1ページ前後の記載をした企業が最多で、平均2ページ程度、0.5ページ~18ページ程度の範囲で分布、ということになります。
なお、東証のプライム企業以外(スタンダード、グロースおよびTOKYO PRO Market)に在籍する企業も含めたレポートはまだ公表されていませんが、平均的傾向として東証プライム企業を超えることはないものと想像されます。
では、次に内容面ですが、内閣府令の開示基準の骨子として、人材育成方針・社内環境整備方針、およびそれらに関する測定・比較可能な指標(女性活躍推進法等に基づき要請されている場合には、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女賃金格差を含む)と、自社固有の戦略・ビジネスモデルに沿った独自性ある指標を開示するものとされています。
そこでこの開示基準に即してサンプリングして調べてみた結果、人材育成や社内環境整備に関する方針や比較可能な指標の開示については、ほぼ漏れなく記載されています。一方、各社固有の戦略・ビジネスモデルに基づく独自性ある指標については、東証プライム企業各社でも開示していない企業が多く、各社の独自性・特徴ある施策の選定やアピールがまだ十分ではないと思います。
金融庁は開示の萎縮・停滞を防ぐ観点から、初めから完璧を求めるのではなく「ステップ・バイ・ステップ」で「できるところから開示」することを奨励しています。各企業におかれては、今回の人的資本開示義務化を、企業の成長に向けた人的資本の向上策の立案・実行に取り組む良い機会と捉えていただければと思います。
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