IT統制対応支援
昨今、スタートアップ企業のお客様を中心に「監査ログ」に関する質問を受ける機会が増えてきています。背景には、契約しているクラウドサービスによって収集できる「監査ログ」の種類や保存方法・保存期間などが異なること、IT全般統制(ITGC)の評価に必要な「監査ログ」がどのようなものなのか一般にはあまり知られていないことがあるようです。
そこで、本稿では、「監査ログ」を「ITGCの評価に必要なログ」と定義し、その内容を明らかにしたうえで、クラウド環境を前提とした監査ログの管理について、留意すべき点を概説します。SaaSの会計システムなどを利用している企業の経理担当者様や情報システム担当者様の参考になれば幸いです。
ITGCの評価は、会計システムおよびその周辺システムのアクセス管理や運用管理が、会計期間を通じて適切に実施されていたか、という観点で行われます。そのため、監査法人は、主に以下のような監査ログの提供を求めてきます。
※仕訳の変更履歴がユーザー側で解析できないケースなどでは、より広範なイベントログの提出を求められることもあります。
上記以外に一般的な監査ログとしては、データベースの操作ログが挙げられます。しかし、SaaSなどクラウドサービスの場合、アプリケーションを介さずにデータベースを直接修正することは事実上不可能であり、会計数値に影響することはほとんどないため、監査法人から提供を求められることは基本的にありません。
クラウドサービスの場合、デフォルトまたは簡単な初期設定を行うことで容易に監査ログを収集することができます。ただ、収集した監査ログをどこに保存するか、という点は非常に重要な論点であり、以下の要素を中心に検討が必要です。
次に、監査ログの保存期間を検討します。監査ログをいつまで保存する必要がある(保存できる)のかは、実務上の大きな論点です。この点、監査基準上、監査ログの保存期間は明示されていないため、他の法令やクラウドサービスの契約などを参照しながら検討する必要があり、下記のとおりいくつもの選択肢が考えられます。
今回は、クラウド環境を前提にITGCに関連する監査ログについて概説しました。監査法人の立場からは監査ログはできるだけ長期にわたって入手できることが理想ですが、現実にはシステムの仕様やコストなど種々の制約とリスクを考慮し、一定の妥協点を見出す必要があります。また、監査ログは、あくまでも過去の記録ですので、監査対象期間全体をカバーするためには、当該期間の前に設定をしておく必要があります。直近の期末監査へ対応しつつも、時期を見据えて監査法人とコミュニケーションを取ることが推奨されます。
※当コラムの内容は筆者個人の私見であり、BBSの公式見解ではありません。
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