IPOを目指したときに障害となるクラウド型システムの意外な盲点

先日、2020年度におけるIPO企業数は、既に2016年~2019年度のIPO社数を上回っているとの新聞記事がありました。コロナ禍においても株式相場は2020年3月の安値から回復し好調が続いているのがその要因のようです。弊社でもIPOを目指す企業からの問い合わせは、最近も多く寄せられています。

そのような中、最近、IPOを目指す企業の障害、盲点となるのがクラウド型システムです。
昨今、中小企業において、クラウド型システムを導入するケースが増えています。システムの管理には、知識・経験のある専任者が必要になることを考えると、自社でシステムやサーバーを管理することなく、ベンダーにシステムのデータ及びプログラムの管理を委託できることは、人員が少ない中小企業には大きなメリットがあります。

IPOを目指す企業は、人員に限りがあるケースが多く、総じてクラウド型システムを導入しているケースが多くなっています。
一方で、IPOを目指すときには、監査法人による監査を受ける必要があります。監査人は、外部委託先でも重要性があれば、外部委託先の内部統制が適切かどうかということを監査することが求められています。そして、財務諸表を監査する監査人にとって、財務数値に関連するシステムのデータやプログラムが適切に管理されているかどうかは、重要な関心事となります。

監査上は、外部委託先の内部統制の状況を確認するために、外部委託先が受領しているSOC(System and Organization Controls)レポートという報告書を通じて確認するのが一般的です。しかしながら、クラウド型でサービスを行うベンダーは、監査を必要としない中小企業にサービス提供しているケースが多く、SOCレポートを入手していない場合が多くなっています。SOCレポートの入手は、相応の時間とコストがかかるため、システムベンダーが、これを入手していない場合は、監査上、確認する手立てがなく監査ができない、という議論になってきます。場合によっては、SOCレポートを入手しているベンダーにシステムを入れ替えるなどの必要性が生じ、上場予定時期がずれ込んでしまうケースも想定されます。

IPOを目指す企業においては、システム変更を検討しているケースも多いと思います。その際、クラウド型システムを導入される場合は、そのベンダーがSOCレポートを入手しているかどうかも予め検討しておく必要があります。