公認会計士コンサルタントのショートコラム
電子文書管理のポイント
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はじめに
近年、働き方改革や企業を取り巻く環境変化への対応などから、テレワークを推進する企業が増えており、そのためペーパーレス化を推進する企業が増えています。
ペーパーレス化により、業務効率化、コスト削減などの効果が見込まれますが、紙文書を前提とした業務ルールになっており、文書管理規程が適切に改訂されていないなど、業務運用に関する社内ルールが十分に定められておらず、電子文書管理が不十分な企業も多く見受けられます。
当コラムでは、電子文書管理のポイントについて、社内ルールとして定めるべき事項について解説します。
文書管理は、文書のライフサイクルの段階ごとに業務運用を踏まえたルールを定めることから始まります。
【文書のライフサイクル】
- 作成・受領
- 活用・伝達
- 保管
- 保存
- 廃棄
1. 作成・受領段階
文書の作成・受領段階では、ファイル名称の付与、電子化(スキャン)の方法といった事項についてルールを決めます。
ファイル名称付与ルールがなければ、各人が勝手にファイル名称を付けてしまい、検索性が阻害されるおそれが生じます。また、多くの文書がある場合は、しっかりしたルールを決めておかないとスキャンやファイル名の付与に手間を要し、やはり業務効率を阻害することになります。
2. 活用・伝達段階
活用・伝達段階では、文書の回付方法などについてのルール決めが必要となります。電子文書の回付は電子メールやワークフローといったシステムを活用するケースが多くなるため、これらの使い方、セキュリティなども含めたルール決めが必要となります。
3. 保管/保存段階
保管と保存は似たような用語ですが、文書管理において保管とは日常業務で頻繁に使用する文書を一時的に格納することを意味し、保存とは、業務で使用しない文書を倉庫などに長期間格納することを意味します。
電子文書においても使用頻度の多寡に応じて、ファイルサーバーに格納するのか、文書管理システムに格納するのかなどのルールを決める必要があります。
また、極秘文書など、機密性に応じたセキュリティ対策についてもルール決めが必要です。
4. 廃棄段階
文書の廃棄段階では、電子文書を保存サーバーから削除する際の手続きなどについてルールを決める必要があります。何らルールがないと、不要なデータが保存され続けて保存サーバーの容量を圧迫することにつながったり、保存が必要な文書を誤って削除してしまうといったリスクも考えられます。
おわりに
ペーパーレスによる業務効率化の効果を最大限に引き出すためにも、電子文書といえども文書であることに変わりはありませんので、電子文書の特性を踏まえ、業務に適した文書管理ルールを整備・運用する必要があります。
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著者プロフィール
小板橋 良徳(こいたばし よしのり)(株)ビジネスブレイン太田昭和
アカウンティング・コンサル本部CPA室 マネージャー 公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業後、会計事務所を経て、現職。内部統制構築・評価支援、IPO会社支援、新会計基準導入、電子帳簿保存対応、業務改善等の会計・業務コンサルティングを担当。