”ジョブ型雇用のゆくえ”を考える

  • 日本の雇用制度はメンバーシップ型と言われ、入社時の雇用契約書で、会社の一員になる資格(メンバーシップ)を得て、職務を限定せず、様々な仕事を経験することによってジェネラリストとして能力を向上させるという考え方に基づいており、勤務年数に応じて昇給する年功型の賃金制度が下支えをしてきました。
  • メンバーシップ型雇用(日本型)の対極にあるのがジョブ型雇用(欧米型)です。ジョブ型雇用は、職務が限定され、職務で賃金が決まり、職務の難易度が上がらなければ報酬が増えず、担当業務が無くなったり能力不足であれば雇用契約は解除されます。
  • 日本において、テレワークが一時的ではなく、多くの企業に定着していくと、勤務時間に基づく日本の雇用制度は、成果主義に基づく欧米型に変化させていかざるを得ない・・・という認識が強まっています。
  • 実際に、複数の大手企業がジョブ型人事制度の導入を発表しました。この機会にジョブ型への移行を検討される企業も多いのではないかと思います。
  • しかし、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。ジョブ型雇用の基盤となるジョブディスクリプション(職務記述書)はいったいどれくらいの数を作成することになるのでしょう。企業規模にも作り方にもよりますが、数百から場合によっては千を超えるジョブディスクリプションを整備した上で、それぞれのジョブディスクリプションの価値(賃金)を決めなくてはなりません。また、それらを定期的にメンテナンスすることも必要になります。加えて、日本の雇用慣行として、解雇が厳しく制限されており、導入し定着化させていくためには、労働組合との十分なコンセンサスも必要となります。
  • ジョブ型への移行は一つの大きな流れですが、やみくもにジョブ型雇用制度に移行し、ジョブディスクリプションの作成に乗り出すのは賢明ではありません。現実的なのは、まず管理職へ導入する、特定分野の新卒に導入する、さらに導入範囲を広げることが必要だと判断することができたら非管理職に対する導入を検討する・・・このような優先順位になるのではないでしょうか。
  • メンバーシップ型雇用にジョブ型雇用を組み込みながら、日本版ジョブ型雇用を模索していく・・・これが”ジョブ型雇用のゆくえ”だと考えます。