労働力不足のなか、採用強化とともに重要なのは、今いる社員の活躍推進・離職防止です。
とりわけ社内で「エース」と目される社員が離職することは、戦力低下というだけにとどまらず、周囲の社員の士気の低下や離職の連鎖につながりかねません。

ではなぜ辞めるのか。
さまざまな調査結果で、退職理由として一番に来るのは「給与が低い」ことですが、これはいわゆる「衛生要因(不満を引き起こす要因)」です。
この給与や労働環境の改善、福利厚生の整備によって、職場に対する不満やストレスは軽減できますが、ある程度まで待遇が良くなると、離職率は変わらない、とくにエース社員の離職は防げないといった研究結果もあります。
これは、衛生要因が整うと、その先に、やりがいや自己実現といった要求が出てくるためです。とくに優秀と評価される社員ほど、自己実現や有用感、他者からの承認を強く求める傾向があります。

このようなエース社員の主な退職理由としては、以下が挙げられます。

  • 評価や報酬、待遇への不満(自分の成果が正当に評価されない不満)
  • 過剰な期待や業務負荷
  • スキルアップの機会不足や「このままでは成長できない」という不安
  • 人間関係での悩み、ストレス

求められる対策としては、

  • 成果に応じた納得感のある評価・報酬制度
  • 業務負荷の把握・調整
  • キャリアパスの提示と挑戦する機会の提供
  • 風通しの良い職場風土づくり

といったことが考えられます。

当然ながら、人によって離職理由は異なります。
期待されるあまり、業務が集中して限界に達してしまう社員もいれば、もっと新しいことに挑戦したい、スキルアップしたいのに今の職場ではそれが叶わないと感じている社員もいるでしょう。
一人ひとりと適度にコミュニケーションを取りながら、いち早く離職サインに気付き、動ける上司・職場であることがポイントになってきます。

人事部には、評価・報酬制度やキャリアパスといった制度面の整備と、部下の状況を把握して対応できる上司の育成・風土づくり、その両面での取り組みが求められます。