シニアが活躍できる仕組みとは

「90歳定年」という記事に目が留まりました。
ビル清掃を行う企業が90歳までの段階的定年制を導入したそうです。80代でもモチベーション高く意欲的に働く方の様子が紹介されており、とても印象的でした。
皆さんの会社の60歳以上の雇用の仕組みはどのようになっているでしょうか?

厚生労働省が行った令和6年(2024年)「高年齢者雇用状況等報告」によると、60歳以降の雇用延長で採用されている仕組みとしては「継続雇用制度」を導入している企業が67.4%(前回調査より1.8ポイント減少)、「定年の引き上げ」を実施している企業は28.7%(前回調査より1.8ポイント増加)という結果となりました。
依然として60歳で定年退職し契約社員として再雇用する継続雇用制度が主流ではありますが、定年の引き上げ、いわゆる定年延長で対応する企業が増加傾向で、同調査による企業における定年制の状況によりますと、60歳定年とする企業は全体の64.4%を占めましたが2.0%減少し、次いで65歳定年とする企業が25.2%となり、こちらは1.7%増加という結果でした。4社に1社が65歳まで定年年齢を引き上げており、シニア活用の施策として確実に増加傾向にあります。

モチベーションの維持・向上が大きなメリットとされる定年延長制度ですが、制度設計においてはどのようなことがポイントとなるでしょうか? 考察してみました。

  1. 役割を基軸とした制度設計

    まず前提として、役割や職務を基軸とした人事制度となっていることが必要です。定年引き上げのデメリットとして、役職・ポストの活性化が進まないことや人件費の増加などが挙げられますが、これらの原因は年功を基軸とした仕組みにあることが考えられます。シニアだから年齢で処遇を下げるのではなく、シニアに求める役割や職務に応じて処遇を決める仕組みとすることが重要です。

  2. 柔軟な働き方

    次のポイントは、さまざまな働き方に対応した仕組みとすることです。60歳以降は働く目的や体の状態にも変化が生じ、ワークライフバランスを重視した働き方や、自身の体調や体力に応じた働き方などの選択肢が必要になります。そのためには、定年引き上げという一律の対応だけでなく、役割や業務量を抑えた働き方も選択できるようにするなど、働く側の目的や体の変化に柔軟に対応できる仕組みとすることがポイントです。

  3. 企業からの説明性と働く側の納得性

    そして何より重要なのが、働く側が納得して働ける仕組みとすることです。今、転職市場ではマネジメント経験を持つシニア人財の需要が高まっています。年齢という基準だけで役職定年となり処遇が下がる仕組みでは優秀なシニア人財を引き留めることは難しいでしょう。シニア人財として何が期待され、結果どのように処遇されるのか? 期待される役割は、これまでの経験などを活かすことができ、やりがいの持てるものなのか? 企業には、シニア人財が納得して働くことができるようにするための説明が求められます。

冒頭で紹介した企業では、87歳の現役社員が今もやりがいを持って後進の指導や業務の改善に取り組み、90歳をめざして働いているようです。
年齢や性別にかかわらずいかに活力ある人的資本を整備するか?
今、企業が取り組まなければならない課題です。