企業の成長に合わせて人事制度もアップデートを

企業が成長する時、営業や生産といった売上に直結する部門の拡大に対して、それを支える間接部門や規定・制度といった基盤整備が追い付かず、コンプライアンス違反などの問題が発生することがあります。

そのなかでもとくに後回しになりがちなのが人事制度です。
企業規模は拡大しているのに、人事制度は10年・20年前に導入したまま、組織の実態に合っておらず形骸化しているという会社も少なくありません。

人事制度には、昨今のジョブ型人事制度や1on1ミーティング、初任給や若手の賃金引上げなど、その時代のトレンドはあるものの、実際には、すべての会社にあてはまる「正解」があるわけではありません。
業界や職種の特徴、企業のめざす姿、そして企業規模などによっても、自社に合った仕組みは異なります。

企業規模の観点でいえば、組織が小さければ、できるだけシンプルで柔軟性の高い仕組みにすることがより重要になります。逆に、大きくなればなるほど、多くの社員の目線や方向性を合わせるための仕組みを加えるなど複雑性が増すことから、運用負荷を抑える工夫が必要になります。
つまり、社会情勢の変化だけでなく、企業の成長にも合わせて人事制度をアップデートしていくことが必要です。

規模の拡大に合わせて起こりがちな問題の代表例として、以下のようなものがあります。

  • 部門や職種が多様化し、それぞれに求められる役割や行動が異なるのに、実態に合わないまま運用している。
    →対策例:職種別の制度設計
  • 評価者(マネージャー)が増えたことから、評価の目線やスキルのばらつきが大きい。
    →対策例:評価者の目線を合わせるための定義・基準設計、研修の開催
  • 社員が増え、誰もがマネージャーをめざす(なれる)わけではないため、キャリアパスが見えなくなる。
    →対策例:専門職としてのキャリアパスを備えた複線型人事制度の策定
  • 会社の理念や方針の浸透が弱まる。
    →対策例:人事制度への理念・行動規範などの組み込み

こうした問題を放置していると、じわじわと社員のモチベーションや社内のモラル低下、離職の増加といったことにつながっていきます。自社の状況や社会情勢を見ながら、人事制度をアップデートしていくことが大切です。