キャリア形成を後押しする新制度「教育訓練休暇給付金」~企業ができること

本記事では、2025年10月より新設された制度「教育訓練休暇給付金」の概要と、そのポイントを紹介します。
教育訓練休暇給付金制度は、社員が自らのキャリア形成に向けて学び直しを行う際に、休暇取得中の生活費の支援を目的としたものです。当制度は企業が人的資本経営を推進するうえで、社員の自主性を尊重しながら成長を支援する重要な施策の一つとなりそうです。

当制度は、一定の条件を満たした個人が職業能力の向上を目的とした教育訓練を受けるために休暇を取得する際、国から給付金を受け取れる制度となります。対象となる教育訓練は、厚生労働省が指定するもので、リスキリングや資格取得(業務で活かせる語学の習得や資格取得など)が含まれます。
*詳しくは厚生労働省のWebサイトで確認ができます。

給付の対象となるためには、休暇が就業規則や労働協約などに規定されたものであることが条件であるため、企業側は制度の内容を正しく理解し、社員が申請しやすい環境を整えることが求められます。

当制度を活用する場合、個人・企業それぞれのメリットは以下が挙げられます。

個人にとってのメリット:

  • 収入減少の不安を軽減し、安心して学びに集中できる
  • キャリアの選択肢が広がり、将来的な昇進や転職にも有利
  • 自主的な学びを通じて自己肯定感やモチベーションが向上

企業にとってのメリット:

  • 社員のスキルアップによる業務の高度化・効率化
  • 自律的な人財育成によるエンゲージメント向上
  • 人的資本経営の実践として、企業価値の向上につながる

一方で、制度の活用については、社内の制度整備などが必須要件となることに加え、導入にあたっては以下のような懸念も想定されます。

  • 業務との兼ね合いで休暇取得が難しい:とくに少人数の部署では、一人が長期休暇を取ると業務が滞る可能性がある
  • 人員減による負担増:残された社員への負担が増すことで、職場の不満や離職につながる懸念がある
  • 心理的ハードル:育児休暇と同様に、「周囲に迷惑をかけるのでは」という遠慮が制度活用を妨げる懸念がある

上記のような懸念もあるため、当制度の活用には、企業側の理解と準備が不可欠です。
制度の導入にあたっては以下の対応について改めて検討してみるのはいかがでしょうか。

  • 給付金申請の流れを把握し、社員にわかりやすく説明できる体制づくり
  • 就業規則の整備や制度利用に関する社内資料の提供
  • 制度利用者(や周りの社員)への業務支援体制の構築

人的資本経営の観点からも、社員の学びを支援する制度設計は今後ますます重要になります。BBSでは、人事制度の見直しや導入・運用に関するコンサルティング業務を通じて、企業の人的資本経営を支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。