男女間賃金差異、女性管理職比率の情報開示義務化について

令和8年(2026年)4月から、常時労働者数101人以上の企業の「男女間賃金差異」および「女性管理職比率」の情報開示が義務化されます。これまでも、常時労働者数301人以上の企業に男女間賃金差異の公表が義務付けられていましたが、今回、対象企業の範囲拡大と、女性管理職比率の公表義務追加が実施されます。
一般的にまだあまり知られていない法改正と思われますので、これについて紹介します。

改正の背景

2025年6月11日に女性活躍推進法の改正法が公布され、その内容に上記事項が盛り込まれました。
日本は、ジェンダーギャップ指数でつねに国際的に後れを取り、2025年度版の発表によると148カ国中118位で、G7では最下位、とくに政治・経済分野での改善が遅れているとされています。
日本政府は女性管理職比率30%を目標に掲げていますが、現状では12.9%と低水準にあり、賃金差異の改善も進まないことから、情報の公表を義務化することで、企業の改善への取り組みを促すことがねらいと思われます。
※ジェンダーギャップ指数:世界経済フォーラムが公表する経済・教育・政治参加などの分野での世界各国の男女間不均衡を示す指標。

対応の指針について

厚生労働省は、2025年10月にこの情報開示に関して、省令および指針で示す内容を整理しました。指針では、単に数値のみに着目するのではなく、その要因や課題を分析して改善することが重要であるとし、その情報も補足的に公表することが望ましいことが指摘されました。

以上が概要ですが、単に義務化への対応という発想ではなく、マネジメント改革の着眼点としてこれを捉えることが、サステナブルな経営には重要であると考えます。
例えば、女性管理職比率の向上は、女性社員の任命を増やすだけでは持続性がなく、併せて管理職についても多様な働き方ができる仕組みを整備することが必要不可欠と思われます。
また、賃金差異の改善については、労働時間に応じた給与設定の仕組みのなかでは、どうしても働ける時間の長い方に有利となり、改善はなかなか進みづらいのではないでしょうか?

これらに対応するためには、労働時間に頼らずにパフォーマンスやアウトプットを維持するための企業内の本気の取り組み改革が必要です。決して容易なことではありませんが、政府の発信をきっかけの一つとして、そうした企業が増えることで生産性が向上し、企業にとっては労働人口減少社会での生き残り策にもなると考えています。
近年では技術の進歩を活用した業務効率化と選択型の人事制度整備に統合的に取り組むことで、ブレイクスルーする企業も出てきています。堂々と会社の指標を公表できるようなチャレンジを私たちも支援したいと思っています。