人事制度構築支援
2025年は労働基準法の大改正に向けた議論が行われました。2026年通常国会への労基法改正案の提出は見送りとなりましたが、将来的に改正が実現すれば、人事・労務の現場に大きな影響を与える見込みです。そのなかでも、人事制度(賃金制度)に大きな影響を及ぼすと思われるのが、管理監督者の要件見直しの方針です。グレーな論法ながら現在多くの企業が使っている管理監督者の仕組みですが、労基法改正の議論のなかで管理監督者の要件を明確化する方針が示されており、曖昧な基準で制度を運用してきた企業にとっては、法的リスクが一段と高まることになります。
管理監督者制度のメリットは2つあります。1つは「労働時間と賃金を切り離し、成果で報酬を決められる」こと。もう1つは「36協定の上限時間規制を受けない」ことです。しかし、前者は定額残業代制度を導入すればほぼ同様の仕組みを構築できます。後者についても、対象者の残業が36協定内に収まっている場合、実質的なメリットはありません。加えて、管理監督者の健康確保措置の強化、長時間労働の抑制が法改正の方向性として議論されており、「管理監督者は協定上限を超えて長時間働かせることができる」という認識そのものを改める必要があります。
こうした背景を踏まえると、「リスクを抱えながら管理監督者制度を維持する」よりも、「定額残業代制度に切り替える」方が合理的かもしれません。定額残業代制度への切り替えを行う場合は、現在の月例給与の一部を切り出して定額残業代として再構成するという方法が考えられます。この際、残業単価が下がることで「不利益変更」が生じますが、元々管理監督者の割増賃金は深夜勤務手当(25%)しか支給されておらず、残業単価が下がったとしても実質的な不利益の程度は限定的といえるでしょう。
さらに、制度変更にあたっては、単に「年収維持」を掲げるのではなく、「年収を若干増加させる」形で制度設計を行えば、対象社員の納得も得やすくなり、制度変更をポジティブなメッセージとして伝えることが可能となるでしょう。
重要なのは、準備を前倒しすることです。今から、自社で管理監督者とされている社員の労働時間や賃金水準を分析し、「管理監督者として扱えなくなる」場合の代替スキームを検討しておくべきです。労基法大改正をチャンスと捉え、管理監督者の処遇を再設計することで、働き方の健全化と生産性の向上を同時に実現していきましょう。
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