多様化時代の「裁量労働制見直し」をどう捉えるか

2026年2月、高市首相が施政方針演説で「裁量労働制の見直し」に言及し、柔軟な働き方の拡大を検討する姿勢を示しました。このニュースを受け、社会では期待と不安の双方が挙がり、賛否が大きく分かれています。裁量労働制が柔軟な働き方を後押しするという肯定的な意見もあれば、長時間労働を助長しかねないとの懸念も根強い状況です。

とはいえ、こうした議論は「賛成・反対」で一刀両断できるものではありません。制度はあくまでツールであり、効果のほどは使い手次第です。
裁量労働制に限らず、フレックス、週休3日制、テレワーク、ワーケーション、フリーアドレスなどの柔軟な働き方に関する仕組みは、「自分の働き方やキャリアについて自律的に判断できる」「仕事における成果をきちんと理解し、必要な行動を自らの責任のもとで選択できる」タイプの自律的な人財にとっては非常に相性の良い仕組みでしょう。
他方で、「指示待ち」「右へ倣え」「自分で決めるのではなく、決めてもらいたい」「他責」といった思考を持つタイプにとっては、かえって機能しづらい仕組みになります。

働き方の多様化はもはや一過性のトレンドではなく、構造的な変化として定着しています。とくにテレワークの可否は、すでに求職者にとって会社選びの重要な要素となっており、企業が優秀な人財を確保するためには「選択できる働き方のオプション」を提示することが欠かせません。

その一方で、こうした選択肢を十分に活かせるかどうかは、社員側の自律性と企業側の制度設計の両輪によって決まります。だからこそ企業は、単に制度を並べるのではなく、社員が選択肢を“使いこなせる”状態をつくることが重要になります。その前提として「自律・選択・責任」というコンセプトを人事制度に組み込み、役割定義や評価基準のなかで明確に示すことや、教育・研修制度(例:セルフマネジメント研修、目標設定・振り返りトレーニング、キャリアデザイン講座など)で行動定着を支援することが効果的です。

これから多様な働き方の制度はさらに整備され、選択肢はいっそう増えていくでしょう。その変化に備えるためにも、人事制度が社員の自律的な働き方を支えられるよう、基盤づくりを進めることが企業の競争力向上につながります。柔軟な働き方を「制度として持つ」だけでなく、「使いこなせる組織」をつくることこそ、これからの人事の役割といえます。