人事制度構築支援
厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」によれば、2024年の年間総実労働時間は減少傾向が続き、コロナ禍を除けば過去最短水準となりました。また、年次有給休暇の取得率も上昇し、過去最高を更新しています。働き方改革の進展や人手不足を背景に、企業は労働時間の適正化や休暇取得の促進に取り組み、一定の成果を上げているといえるでしょう。
一方で、2026年2月1日の日本経済新聞は「特別休暇拡大でも『年休』は未消化、ちぐはぐ続く日本企業の休み」と題し、制度拡充と実態の間にあるギャップを指摘していました。企業がリフレッシュ休暇や、治療と仕事の両立支援休暇などの特別休暇を新設・拡充する一方で、本来取得できる年次有給休暇が十分に消化されていないケースが少なくないという内容です。制度は拡充しているのに、活用が進まない。この「ちぐはぐさ」は何を意味しているのでしょうか。
背景には、制度の整備と制度の利用の間に存在する見えない壁があります。休むことへの心理的遠慮、代替要員がいない業務体制、属人化した仕事、上長ごとの判断のばらつき、煩雑な申請手続き……。これらのハードルが残ったままでは、どれだけ制度を拡充しても、現場での活用は広がりません。制度はあるが、使われない状態にとどまってしまいます。
労働時間が減少する時代に求められるのは、単に労働時間を削減することではなく、限られた時間のなかで成果を最大化できる組織への転換です。そのためには、業務の標準化や見える化、引き継ぎルールの整備、評価制度との整合など、「休んでも回る仕組み」を構築することが不可欠です。休暇制度の活用度合いは単なる福利厚生の充実度ではなく、業務の仕組みやマネジメントの成熟度を示す指標でもあります。
これらのことを踏まえ、人事制度の役割も変わりつつあります。制度を整えること自体を目的とするのではなく、制度が活用される状態までを設計することが重要です。取得率や利用実績を可視化し、管理職の評価や組織のKPIと連動させるなど、運用面に踏み込んだ仕組みづくりが求められます。
制度は存在するだけでは価値を生みません。活用されてこそ、社員の納得感と組織の生産性向上につながります。労働時間の減少と年休取得率の上昇という前向きな変化を、本質的な競争力強化へと結び付けられるか否か。その鍵は、「制度がある」から「制度が使われる」状態への転換にあります。こうした動向を、自社の人事制度を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。制度が現場で本当に機能しているかを問い直すことこそが、次の成長への第一歩ではないでしょうか。