SDGsの現在地〜「SDGsウォッシュ」を知っていますか〜

  • 日本でもSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))に取り組む企業が増えています。世界規模の大きなムーブメントですので、“取り組まざるを得ない”“乗り遅れるわけにはいかない”という感覚に近い団体も多いかもしれません。
  • SDGsには、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲット、その下にさらに詳細な232の数値目標が設けられています。17の目標の内容は、貧困、飢餓、健康、教育、安全な水、エネルギー、働きがい、経済成長、まちづくり、気候変動、海・陸の環境など広範なものであり、世界全体で取り組む壮大なものです。それもあってか、理念としてはわかるけれど、範囲が広く、量が多いため、SDGsと自社、自分を具体的につなげることが難しい、腹落ちしないなどという声が多いようです。
  • それらの声を聞くなかで、私自身、SDGsに関して気になった一つの言葉と、好感を抱いた一つの取り組み事例をご紹介します。
  • 「SDGsウォッシュ」という言葉をご存じでしょうか。SDGsウォッシュとは、真剣に取り組んでいないのに、取り組んでいるふりをする、実態のないうわべだけのSDGs活動をいいます。SDGsに貢献する意志があっても、取り組みが不十分であったり、方法が間違ったりしているためにSDGsウォッシュだと批判されてしまう事例も生じているようです。SDGsウォッシュであると批判されてしまうことは、企業にとって痛手であり、結果的にはSDGsに全く貢献していない状態よりも企業の評判を低下させる可能性も考えられます。
  • 日本のある証券会社の取り組みを紹介します。その証券会社は、顧客企業の方々に対する昇進祝いを第三者への寄付で代替する取り組みを始めました。新社長の就任時に送っていた花や祝電に相当する金額を、SDGsに関係するNPO法人に寄付し、取引先とともに社会貢献に取り組む姿勢を打ち出しました。新たな昇進祝いは、顧客の意向を確認したうえで、支援する約10のNPO法人を寄付先として提案します。企業のお金の使い方にESG(環境・社会・企業統治)対応が求められるなか、儀礼的なコストを有効活用し、取引先とともにSDGsの取り組みを強化するものです。業界の慣行をSDGsへの取り組みに転換した優良な事例だと考えます。ヒントになるのではないでしょうか。
  • SDGsへの取り組みは企業の重要な経営課題です。主体的に戦略や中長期の経営計画に組み込み、人事制度でいえば評価制度の目標に落とし込むなどして具体化していくことが求められます。他社の取り組みにも注目しながら、各社が知恵を出し合い、自社らしい具体的な施策が展開されていくことを期待します。