雇用流動化 若者けん引 ~3年内離職率、10年で最高~

  • 人事担当者の皆さんにとっては共通認識だと思いますが、大卒3年内離職率はずっと30%程度でした。就職戦線が売り手市場/買い手市場にかかわらず、国内の景気動向にかかわらず、大きな変化がなく30%程度の離職率が継続してきました。不思議な話ではあります。しかしながら、直近の数字では32.8%(前年比0.8ポイント増)と過去10年で最高になっています。新卒採用難のため、大卒3年程度までの人財を「第二新卒」として積極採用する企業が全体の約4割まで増えていることも若い人財の離職・転職を後押ししているかもしれません。
  • リクルートの人材紹介会社「リクルートエージェント」によれば、2020年に20代前半で転職が決まった人の数は、2009~2013年平均の3.5倍に達し、全年代の平均(2倍)を大幅に上回ります。また、転職先が異業種の異なる職種だった割合が52%と10年前より11ポイント上がっています。
  • 総務省の労働力調査によると、2020年の転職者は319万人と前の年に比べて約1割減少するなど、国内の転職市場はコロナ禍で停滞しています。そんななかで、雇用の流動化を若手人財が牽引し始めているようです。
  • 勤続年数が10年以上の社員の割合が、雇用の流動性を比較する指標となります。日本は45.8%(2017年)と主要先進国で最も高い水準ですが、ノルウェーやデンマーク、スウェーデンなどは30%前後で、生産性の低い分野から高い分野への労働者の移動が活発です。
  • 経団連に加盟しているような大手企業は、従来の終身雇用、年功序列の処遇が維持できなくなってきており、また、ジョブ型の雇用に移行する方向性を明確に発信するようになっています。グローバル化が定着しているなかで、“日本型雇用”はもう維持することができなくなってきているといえるでしょう。
  • 企業の内部に目を向けてみても、「中高年の年功序列世代と企業のこれからを担う世代の間には、転職に対する意識や考えにギャップがある」という話を当社のお客様から伺うことが増えてきました。このギャップ解消は最重要課題です。
  • 日本社会全体の生産性を高めるには成長分野への人財のシフトは欠かせませんが、企業にとっては育てた若手人財の流出は大きな損失です。それでは経営者、人事担当部門はどうすれば良いのでしょう。
  • 年功序列世代に対しては、役割等級制度を基盤とする人事制度への移行、可能な職種からジョブ型の人事制度を導入するなどの意識改革(マネジメントスタイルおよび職務遂行スタイルの変革)が必要でしょう。一方、若手人財に対しては、人事担当者または上司が個別に面談して、彼らが何をしたいのか、どのように働きたいのか、そのために会社は何ができるのかを共有することが欠かせません。これらの施策に対する取り組みが不十分だったり、時間が掛かったりすると、大きな潮流のなかで加速度的に雇用の流出を招くことが危惧されます。危機感を持つ必要があります。ご相談ください。一緒に課題解決に取り組みましょう。