人的資本に関する開示が進む、企業に求められる対応は

人的資本に関する取り組み状況の開示が進んでいます。ディスクロージャー&IR総合研究所が発表した報告書によりますと、女性管理職の登用目標や研修体系の整備状況など、人財への取り組み状況を多くの企業が開示しています。優れた経営ビジョンや経営戦略があってもそれを実行するのは社員となります。投資家の、企業の人財への取り組みに対する関心度は今後いっそう強まる傾向にあるようです。

なかでも多くの企業が開示しているのは、女性の管理職比率です。前述の報告書では、2021年に統合報告書を発行した718社のうち5割の企業が女性管理職の登用目標を開示しています。

今後は、目標数値を達成するために具体的な施策や取り組みが企業に求められますが、具体的な取り組みのポイントとしては以下の3つが考えられます。

  1. ブランクをつくらない働き方の提供
    育児などで時間や場所の制約があるなかでも、仕事を人生の一部と捉える「ワークインライフ」の考え方に基づき、スーパーフレックス制度や細切れの時間帯を活用するスイッチワークなど、働く時間を柔軟に取得できる仕組みをテレワークと併せて導入する。
  2. 管理職の素地を育成する機会の提供
    女性管理職を中長期的に確保し定着させていくために、管理職候補者を増やす活動として、リーダーとしての役割を求め育成する機会をつくる。
  3. 役割・仕事に応じた人事制度の整備
    1、2のベースとして、年功ではなく、役割やジョブに応じて評価・処遇する人事制度を整備する。

以上、女性管理職比率を高めるポイントについて考察しましたが、開示されている情報としては、研修体系、従業員エンゲージメント、離職率と続きます。これら人的資本に関する開示を進めていくためには、体系的な研修プログラムによる継続的な人財育成への取り組みや、従業員満足度やコミットメントを高める活動、そして、長く社員が働き続けることのできる環境の整備と、いずれも中長期的な取り組みが重要であり、目標数値を掲げてもすぐに結果が出るものではありません。

重要なことは、経営トップからメッセージを発信して、トライ&エラーを繰り返し、働く人や実際に利用する人の意見を吸い上げ反映するという、継続的な取り組みです。目標数値や実態の数値を公開することはもちろんですが、数値を開示するだけでなく、こうした取り組みのPDCAを公開することが企業価値を高めるうえで大切なのではないでしょうか。