離職者増加 防止策として実施すべきこと

厚労省の雇用動向調査によると、令和2年(2020年)1年間の離職者数は、入職者数を上回りました。また、日本経済新聞社がまとめた採用計画調査(最終集計)では、2022年度の中途採用者の数が、採用計画数の全体に占める比率で初めて3割を超えました。

新卒・中途の採用対策に加え、離職対策は多くの企業にとって喫緊の課題となりつつあります。

新卒採用では、2020年度の東証プライム上場企業165社のうち41.8%に当たる企業が全学歴の初任給を引き上げました。この数字は、前年度(旧東証1部上場企業ベース)の速報集計である17.1%から20ポイント以上も上昇しています。業界にもよりますが、数万円という大幅な引き上げをした企業も複数ありました。とはいえ、「初任給を上げたのだから先輩社員も同様に賃上げする」ことは難しいことから、入社後の給与改定は全体的に抑制気味になります。

また、中途採用では、採りたい人財は争奪戦になり、現在の社員の給与水準より高い給与で採用することも多いようです。この場合も、入社以降は給与改定を抑制し、時間をかけて既存の社員の給与水準に収斂させていくことになります。

このように、新卒でも中途でも、入社以降の給与改定は期待ほど上がらないことが多くなると思われます。このことが原因となり、さらなるステップアップをめざす社員の離職が起こるかもしれません。

しかしながら、賃金が離職原因であることは実は多くはなく、厚労省の令和2年(2020年)雇用動向調査結果における「転職入職者が前職を辞めた理由」では、「給料等収入が少なかった」は男性9.4%、女性8.8%と、1割に達していません。離職理由の本音として多いのは、「上司、同僚など、職場の人間関係がうまくいかなかった」「会社の方針に共感できない」「仕事が面白くない、やりがいを感じない」「会社や業界に将来性を感じない」などで、なかでもとりわけ多いのが、「上司との関係がうまくいかなかった」という回答です。

こうした状況を踏まえて、人材サービス大手によるパワーハラスメント対策の実施状況に関する調査結果を見てみましょう。

「社内に相談窓口を設置:80%」「就業規則に罰則規定を設ける:56%」「パワハラの対策方針の明確化:45%」「管理職向けの研修・講習会の実施:44%」「従業員向けの研修・講習会の実施:33%」。――十分な対策が取られているとは言い難い内容です。同じ調査のなかで、対策を進めるうえで課題として最も多かったのは「管理職のパワハラに対する認識・理解が低い:55%」でした。

先の見えにくいこの時代に、自身の業界、会社、仕事や職場の未来について考えた従業員の方々が多かったのではないかと推測します。そうしたなかで、上司が従来からのマネジメント方法を変えず、パワハラを含むいわゆる“昭和のマネジメント”をしていては離職者がますます増加すると思われます。したがって、管理職向けおよび従業員向けのパワハラを含むマネジメント研修の実施は必須でしょう。

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