「アルムナイ採用」という言葉をご存じでしょうか?
アルムナイとは、英語で卒業生や同窓生を意味する言葉で、企業でいうと退職者を意味します。
新卒で就社することが一般的であった日本企業では、なかにはそりが合わずに去って行った中途退職者がいたことなどが理由で、退職者の採用には積極的ではなかった企業も少なくなかったと思います。
しかし今、中途退職者とのネットワークを活用した再雇用や協業といった取り組みがにわかに広がりつつあります。
その背景には、終身雇用という考え方が変わりつつある大きな流れのなかで、少子化・高齢化にともなう構造的な人手不足があります。
アルムナイ人財活用のメリットは、かつての経験を活かした即戦力としての活躍や、人となりをわかっているという安心感などがありますが、何より大きいのは、社外経験を積んできた元社員の知識やノウハウの社内への還元と発揮が期待されることです。
パーソル総合研究所が2019年に実施した調査によると「中途採用者の再入社制度がある」と回答した企業は1割弱にとどまっていますが、終身雇用という仕組みがジョブ型雇用に変わっていくなかで、今後は人財の流動性が高まり、より多くの企業でアルムナイ採用が広がっていくと思われます。
しかし、注意すべき点もあります。
1つは、再雇用後の格付けルールです。既存社員との関係は、場合によっては大きなハレーションとなることから、期待される職務・役割に応じて適切に格付けする仕組みが必要となります。いったん、仮格付けし、実力を見たうえで改めて格付けを確定するなど、既存社員にも説明性のあるプロセスを用意する必要があるでしょう。
2つ目は、社外での経験や実績を事前に把握しておくことです。プラスの経験を積める転職もあれば、プラスの面が少ない転職もあるからです。かつての経験があるから大丈夫だろうと安易に考えず、自社内で経験することのできない取り組みやそれを通じて得ることのできた知識やスキルなど、中途退職以降のキャリアについて確認し、改めて自社の付加価値向上に貢献できる人財か否かを見極めることが重要です。
前職からの転職をともなう場合には、その理由にも留意が必要でしょう。かつて自社を退職した理由と今回の転職理由が同じ場合、本人は自身の課題の把握や克服に消極的なケースもあり、今回も同様の理由で退職となってしまうリスクがあります。
こうしたことから、今後はアルムナイ採用をすることを前提に、残念ながら中途で退職することとなった社員から、適切に次にめざすキャリアや退職事由などを把握することに加え、退職後の人事情報の取り扱いや退職後の情報交換のルールなどについても考えていく必要があるでしょう。
以上、アルムナイ採用を進めるうえで留意すべき点について考察を進めてきましたが、アルムナイ人財を活用する前提として、人事制度が年功を基軸としたものではなく、役割や仕事内容に応じたジョブ型の仕組みとなっている必要があります。期待する役割や職務に応じて格付けし、再び自社で貢献できているかを正しく評価し、その結果を賃金や処遇に反映できる仕組みがあることが必要です。
貴社にはアルムナイ人財を活用できる基盤が整っていますか?
改めて考えるきっかけになれば幸いです。
権利を知らないまま働く7割 ― 中小企業に問われる、パートへの向き合い方
「ホワイトハラスメント」を生まないために人事部がすべきこと
会社の成長を支える「あるべき評価制度」と、これからの人事部の役割
ゴールデンウィーク前から始める五月病対策 ~新入社員の早期離職を防止するために
人的資本経営の推進は人事制度の再点検から始めよう
在職老齢年金制度見直しが問うシニア人財の役割定義
「制度がある」から「制度が使われる」へ
AI活用が広げる人事領域の新たな可能性
多様化時代の「裁量労働制見直し」をどう捉えるか
労働時間短縮時代に求められる評価軸と業務内容の「見える化」
「賃上げ」のその先へ~人的資本経営における「退職給付」という戦略的投資~