女性管理職の登用促進、男性の育児参加促進など、昨今、女性活躍推進の機運が高まりを見せています。
併せて少子高齢化も進むなか、今後は男女問わず、「育児・介護により働き方に制約が生じることになる管理監督者」が増えてくると思われます。

では、管理監督者が育児・介護休業法上の時短勤務を求めた場合、どのように対応するのが良いのでしょうか?

管理監督者は労基法上の労働時間などに関する規定の適用除外となりますので、理屈のうえでは時短勤務を認める必要はなく、厚労省のQ&Aでも、「管理監督者に対して時短勤務の措置を取る必要はない」とされています。
とはいえ、実態として、管理監督者とされている労働者も「所定の始業時間~終業時間の間の勤務は当然」として運用されていることも多いものです。
育児・介護の事情がある管理監督者からの時短勤務の希望も無下にはできません。

そこで、「管理監督者にも時短勤務を認めてはどうか」という話が出てきます。
ただ、この場合、時短勤務中の賃金をどう考えるかは非常に難しい問題です。

まず、「時短勤務期間中も賃金を下げない」という形が考えられます。
しかし、時短勤務によって求められる役割が減縮しているのであれば、賃下げが理屈でしょう。
役割が減縮しているにもかかわらず賃金を変えないのであれば、フルタイム勤務をしている他の管理監督者からの不満を惹起することになってしまいます。

では、「時短勤務分だけ賃金を按分減額したうえで、引き続き管理監督者扱いする」のはどうでしょう。
今度は、「管理監督者は時間管理の対象外であるはずなのに、労働時間の減少分だけ賃金が按分減額となるのは理屈に合わない」という矛盾が出てきます。
按分減額後の賃金が非管理監督者よりも下の水準になれば、「管理監督者に相応しい賃金水準といえるのか?」という話(管理監督者性が否定されるリスク)も出てくるでしょう。
実務上は時々見かけるこの手法ですが、あまり良い手ではなさそうです。

そうすると、今度は「時短勤務分だけ賃金を按分減額したうえで、管理監督者扱いをやめる」という選択肢が出てきます。
これは「あり」でしょう。
ただし、管理監督者の賃金は残業代の不支給見合い分込みで高めに設定されているため、時短勤務時に賃金を按分減額しても時給単価は相当に高水準となり、時短勤務を機に残業代の対象となった当該社員が時短勤務中に残業を多く行えば、高額の残業代が支給されることになります。
そのため、この手法を採用する場合には、対象社員の残業抑止を徹底することが求められます。
なお、この手法による場合には、時間管理の対象とし、賃金も按分で減額することになりますので、当然、期待されるアウトプットもフルタイム時に比べて減縮させるのが理屈です。役割レベルも、目標とされるアウトプットも、賃金水準も、労働時間管理の制度も、すべてセットで相応しい水準に引き下げる形になります。

もちろん、原則論に立ち返って「管理監督者である以上、時短勤務は認めず、役割もアウトプットも従前と同レベルを求める代わりに、賃金も引き下げない」というアプローチもあります。
もとより労働時間管理の対象外であり、本人に裁量があるので、育児・介護の事情があってもセルフマネジメントを通じて対処してもらうという考え方です。
従前より短い労働時間になったとしても、本人の役割遂行に支障がなく、従前と遜色ないアウトプットを出しているのであれば、会社にとって不都合はありませんし、同僚(フルタイム勤務している管理監督者)からの不満も出ないでしょう。逆に、役割遂行などに支障が出たのであれば、降給・降格のリスクも甘受しなくてはならないため、フェアな仕組み(高い処遇に見合ったリスク)といえます。

以上をまとめると、管理監督者の時短勤務に関しては、
(1)時短勤務を認めて、役割・アウトプット・賃金いずれも従前より引き下げ(賃金については按分減額)、管理監督者扱いをやめる
(2)時短勤務を認めず、役割・アウトプット・賃金いずれも従前と同水準とし、引き続き管理監督者扱いとする
のいずれかが、落としどころとしては良さそうです。

加えて、この種の話は本人の理解・納得を得て進めることが肝要です。
「(1)(2)のいずれかを本人が選択できる形」にして制度を整備しておくと良いと考えます。