有価証券報告書等の開示書類作成における実務の効率化

有価証券報告書の開示内容拡充および総会前開示への要請

「企業内容等の開示に関する内閣府令」の2026年2月の改正により、上場会社の有価証券報告書の開示において、サステナビリティ情報、人的資本情報の開示の拡充が予定されています。また、投資家が株主総会の前に有価証券報告書を確認できるようにするため、2025年3月に金融担当大臣より、株主総会前に有価証券報告書を提出することについての「要請」が公表されました。本コラムでは、開示拡充に対応しつつ、どのように開示作成実務を効率化するかについて考えてみたいと思います。

開示作成実務にかかる経理部門などの重複作業および対応時期の集中

上場会社の経理部門では、決算日後、単体決算、連結決算(連結財務諸表の作成が必要な場合)、45日以内の決算短信の開示、株主総会の3週間前までの事業報告等の株主への提供、3カ月以内の有価証券報告書の開示が求められています。これらの各開示書類は、重複している開示項目も多いため、担当者による転記、責任者などによるチェック、監査人による監査などにおいて重複した工数が掛かっています。
また、有価証券報告書の総会前開示を行った上場会社は、3月期決算の場合、2024年3月期は全体の1.8%であったのに対し、2025年3月期は57.7%となり、著しく増加しています(「2025年3月期に係る総会前開示の状況」(金融庁)より)。そして、この総会前開示を行う上場会社は、さらに増加することが見込まれています。
今後、株主総会の開催日を後倒しすることも考えられますが、株主総会を後倒ししない場合には、経理部門の工数負担の時期がより集中することが考えられます。

開示作成実務の重複作業の解消

(1)事業報告等と有価証券報告書の「一本化」

関係省庁では、有価証券報告書に事業報告等を「一本化」する取り組みが進められています。この法改正が実現しますと、「一本化」を選択した場合に、事業報告等の開示内容の一部を有価証券報告書に追加することになりますが、事業報告等の作成は不要になります。
ただし、この取り組みは、現在審議中のため、法制化にはまだしばらくかかりそうです。

(2)事業報告等と有価証券報告書の「一体開示」

現行制度でも可能な方法として、事業報告等と有価証券報告書の「一体的開示」「一体開示」があります。
「一体開示」は会社法(事業報告等)と金融商品取引法(有価証券報告書)の要請を満たす1つの書類を作成して、株主総会前に開示することです(「日本の企業情報開示の特徴と課題」(経済産業省)より)。
ただし、「一体開示」の場合、ひな型が公表されておらず、また、開示書類作成支援システムが実装されていないこともあるため、現時点では、対応するには逆に工数が掛かる可能性があります。

(3)事業報告等と有価証券報告書の「一体的開示」

「一体的開示」は、事業報告等と有価証券報告書の記載内容を可能な範囲で共通化し、別々の書類として作成・開示する場合などを包含するより広い概念です(「日本の企業情報開示の特徴と課題」(経済産業省)より)。
事業報告等と有価証券報告書は共通化できる部分が多く、「一体的開示」は比較的対応しやすいと考えられます。「一体的開示」に対応できていない企業様は、まずは、「一体的開示」を進めることが考えられます。

開示数値のバックデータの見直し

少し細かい実務の話になりますが、開示書類作成支援システムの利用状況にかかわらず、具体的な開示数値を集計するためにExcelなどでバックデータを作成されている企業様が多いと思います。このようなバックデータにおける数値の集計は効率的でないだけでなく、過程が明示的に整理されていない、集計方法の根拠が記載されていないといったケースがあります。このようなケースでは、担当者が変更になった場合などに適切にメンテナンスされない、誤った処理に気付かない、必要がなくなった作業を継続して実施してしまうということがあります。また、社内の責任者などのチェックや監査法人のチェックに必要以上に時間を要してしまう可能性があります。
バックデータのフォームの見直しには、関連の規則、基準を漏れなく正確に理解する必要がありますが、前述の「一本化」「一体開示」「一体的開示」のいずれの対応を進める場合でも、作成担当者の作業、チェック実施者の作業は大きく改善されると考えられます。

BBSのサービス

BBSは、金融商品取引法、取引所規則、会社法等に基づく開示書類(有価証券報告書、半期報告書、決算短信、事業報告・計算書類等)を作成している企業様に対して、開示書類の作成、開示実務の見直しの支援を行っております。開示書類作成について課題を認識されている企業様は、ぜひ、当社の支援サービスの活用をご検討ください。