スタートアップ企業の新収益認識基準対応

2018年3月に公開された新収益認識基準も、2021年4月1日より3月決算企業の適用がスタートし、ついに初めての期末決算を迎えました。上場企業も色々と悩みながら進めてきた新収益認識基準対応ですが、最近はスタートアップ企業からの質問が増えてきています。

どうやら、新収益認識基準の難解さに加え、数多ある取引について個別具体的な収益計上の会計処理を決めていくのには時間がかかることから、監査法人からの十分な支援時間を確保できていない、という背景もあるようです。

以下のやり取りは、とある3月決算のスタートアップ企業のCFOと交わした会話のシーンです。

CFO
最近、監査法人に新収益認識対応をしてください、って言われるんですけど、それっていつまでに対応すればいいんですか?
小林
御社は3月決算会社なので、“原則”としてはこの期末(2022年3月期)から新収益認識基準で決算をする必要がありますよ。
CFO
えっ、ってことはこの期末決算は会社法違反になってしまうってことですか!?まさか、対応しないまま決算終わらせたら、税務署から指摘の可能性もあるってことですか!!?
小林
いえいえ、さすがに非上場でまだ監査も受けていないような中小企業であれば、従来の税法に準じた処理での決算でも大丈夫ですから、安心してください。もちろん、税務署もこの規模の会社が新収益認識基準対応をしていないからって、追徴課税、なんて言いませんから大丈夫です(※)。
CFO
ああ、よかった。では、実際にはいつまでに対応が終わればいいんですか?
小林
御社は2025年3月期での上場を目指していますよね?Ⅰの部、Ⅱの部の作成にあたっては、2021年4月1日から新収益認識基準を適用したものとして対応を進める必要がありますが、まだ2年間は猶予がありますよ。とはいえ、1年後くらいまでには基本的な整理が終わっているといいですね。あと、新収益認識基準の適用によって、どれくらい売上や損益に影響を与えるかは証券会社も気にしていますので、金額的な影響額の算定を求められるかもしれません。
CFO
なるほど。ところで、新収益認識基準対応って何をしたらいいんですか?
小林
これは上場企業も皆通ってきた道ですが、まずは各取引を精査して会計方針を決定する(どんな仕訳を計上するのかを決める)ことが必要です。ただ、会計基準が難解なので、会計方針を決めるのもなかなか難しいです。しっかりと会計基準を理解した上で検討を進め、監査法人にも相談しながら進めるといいですよ。
CFO
わかりました、まずは基準の勉強から始めてみようと思います。
小林
是非そうなさってください。よくわからないことがありましたらレクチャーもしますので、おっしゃってくださいね。

新収益認識基準についてこの1年間の四半期決算開示を見ていても、影響の大きい会社、逆に、ほとんど影響のない会社と様々です。
しかし、もし現在ほとんど新基準による影響がないとしても、企業が成長する過程で必ず検討が必要となる会計基準でもあります。今から、基準を理解した人財を育てることも大事ですね。

※詳細は国税庁HPをご参照ください。

「収益認識に関する会計基準」への対応について