SSBJ基準解説・実務対応 第4回―数値の表示に用いる単位―

はじめに

2025年3月5日に我が国のサステナビリティ開示基準が公表されて以降、本コラム執筆日(2025年9月22日)までに11本の補足文書と50本の参考文書(SSBJハンドブック)が公表されており、有価証券報告書の記載にSSBJ基準の適用が義務化(一部企業)される2027年3月期には、実務担当者が理解しておく必要のある基準及びガイダンスは膨大なものとなることが予想されます。そこで、本コラムシリーズではSSBJ基準及び関連文書の内容を実務対応の観点から解説します。
第4回の今回は、「数値の表示に用いる単位」について解説します。

基準解説・実務対応

本コラムで扱う規定
サステナビリティ開示基準の適用第9項、第10項、BC36項、BC37項
気候関連開示基準第48項
数値の表示に用いる単位

サステナビリティ開示基準の適用 第9項

サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、当該数値の表示に用いる単位(CO2相当のメートル・トン(mt(e))、グラム(g)、ジュール(J)等)を開示しなければならない。

サステナビリティ開示基準の適用 BC36項

サステナビリティ関連財務開示において報告する数値は、必ずしも金額に限られるものではなく、CO2相当のメートル・トン(mt(e))、グラム(g)、ジュール(J)等、報告の対象とする数値により表示に用いる単位はさまざまであると考えられることから、本基準は、当該数値の表示に用いる単位を開示しなければならないとしている。
実務対応
気候関連開示基準により要求される温室効果ガス排出量をはじめSSBJ基準上で報告される数値には測定単位が通貨ではないものも存在するため、SSBJ基準は報告数値の表示に用いた単位を開示しなければならないとしています。この点、当該単位の開示は個別の文書により行うのではなく、報告数値を記載した表の右上や表中に「(単位:mt(e))」や「××mt(e)」と記載することで足りると考えられます。
数値の表示に用いる単位

サステナビリティ開示基準の適用 第10項

サステナビリティ開示基準において別段の定めがある場合を除き、サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、情報を理解しやすくするため、重要性がある情報を省略したり、不明瞭にしたりすることにならない限り、千、百万、十億等の単位を用いて表示することができる。この場合、どの単位を用いているか明示しなければならない。

サステナビリティ開示基準の適用 BC37項

サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、第10項における「別段の定め」には、例えば、「気候基準」における温室効果ガス排出量の表示単位が含まれる。

気候関連開示基準 第48項(一部抜粋)

温室効果ガス排出量は、CO2相当のメートル・トン(mt(e))により表示しなければならない。ただし、(中略)スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出量のそれぞれの絶対総量が大きい場合、千メートル・トン(キロ・トン(kt(e)))、百万メートル・トン(メガ・トン(Mt(e)))又は十億メートル・トン(ギガ・トン(Gt(e)))のいずれかの単位を用いて表示することができる。この選択を行う場合、それぞれの温室効果ガス排出量について、同じ単位を用いて表示しなければならない。

実務対応
第10項の「重要性がある情報を省略したり、不明瞭にしたりすることにならない限り」という点は、気候関連開示基準 第48項 但し書きの「温室効果ガス排出量のそれぞれの絶対総量が大きい場合」という記載が参考になります。つまり、報告数値に対して表示単位の粒度が小さいと報告数値が冗長になってしまいます。逆に、報告数値に対して表示単位の粒度が大きいと多くの報告数値が四捨五入されることで1Mt(e)や0Mt(e)となり情報が過度に省略されてしまいます。これらの判断は財務書類の表示単位を「百万円」とするか「千円」とするかと類似のものとなります。

おわりに

今回は「数値の表示に用いる単位」についての規定を解説しました。いずれの測定単位を使用するかは報告対象の項目に基づいて自ずと決定されるものと想定されますが、単位の規模(キロ、トン)は実際の測定結果の数値規模が明確に伝わるように動的に決定しなければならない点に留意が必要です。

※当コラムの内容は私見であり、BBSの公式見解ではありません。