新リース会計基準における購入オプションの取り扱い

新リース会計基準等の適用

新リース会計基準等(企業会計基準34号、企業会計基準適用指針33号)は、2027年4月1日以降に開始する年度の期首から原則適用されます(早期適用も可)。3月決算企業の場合、残りの準備期間は1年と数カ月となっています。

借手の購入オプションの取り扱い

借手の購入オプションについて、現行のリース会計基準等(企業会計基準13号、企業会計基準適用指針16号)から取り扱いが変更となっている部分があります。少し細かい論点ではありますが、所有権が移転するファイナンス・リース取引では、実務上考慮が必要となる部分ですので、購入オプションの処理について考えてみたいと思います。

借手の購入オプションに関して新基準適用が及ぼす影響

  1. リース料総額

    現行基準では、所有権移転ファイナンス・リースに該当する要件の1つとして、割安購入選択権(名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利)の行使が確実であることが挙げられており、該当する場合は、リース料総額にその行使価額を含めることとされています。
    これに対し、新基準では、割安購入選択権が与えられているかどうかにかかわらず、購入オプションの行使が合理的に確実であれば、リース料総額にその行使価額を含めることとされています。

  2. リース期間

    現行基準では、未行使の購入オプションについて、延長期間をリース期間に含めることとはされていません。
    これに対し、新基準では、購入オプションを行使し、かつリース取引が継続することが合理的に確実であれば、延長期間をリース期間に含めることとされています。

  3. リース開始日のリースに関する資産、負債の計上額

    ※本コラムでは、簡便化のため付随費用などの調整を考慮外としています。

    現行基準では、借手における資産および負債の計上額は、以下の価額とされています。

    【貸手の購入価額等が明らかな場合】

    下記のうち、価額が低いもの

    • リース料総額(行使が合理的に確実な購入オプションの行使価額を含みます。以下同様)を割引率で割り引いた現在価値
    • 貸手の購入価額等

    【貸手の購入価額等が明らかでない場合】

    下記のうち、価額が低いもの

    • リース料総額を割引率で割り引いた現在価値
    • 見積現金購入価額

    これに対し、新基準では、以下の価額のみが認められています。

    • リース料総額を割引率で割り引いた現在価値

    なお、現在価値の算定に用いる割引率は、現行基準、新基準とも、下記の利率とされています。

    【貸手の計算利子率を把握できる場合】

    • その利率

    【貸手の計算利子率を把握できない場合】

    • 借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率

新基準適用時に留意すべき事項

  • 行使が合理的に確実である購入オプションは、割安購入選択権より範囲が広いと考えられるため、対象の購入オプションを洗い出すことが必要です。
  • 購入オプションを行使し、かつリース取引が継続することが合理的に確実であるケースについて、延長期間をリース期間に含めることが必要です。
  • リースに関する資産・負債の当初計上額を算定するにあたり、貸手の購入価額等が把握できるケースは、実質的に貸手の計算利率を把握でき、従来と大きく変わらない結果となると考えられますが、実際に貸手の購入価額等を把握できるケースは少ないと思います。従来、見積現金購入価額を使用していた場合で割引率(貸手の計算利子率又はリース料総額を借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率)で割り引いた現在価値に変更する必要があり、これにともない、資産・負債の当初計上額が変更となり、その後の期間の減価償却費、支払利息の金額に影響が生じます。

当社のサービス

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