経理マニュアルの必要性と作成・運用のポイント

経理マニュアルの作成状況

上場、非上場を問わず、多くの企業様が経理規程や、その下位の細則を整備されています。一方で、経験の浅い担当者が内容を理解し、すぐに実際の経理業務を行うことができるような業務手順に落とし込んだマニュアルという点では、作成していない企業様も多いと思います。本コラムでは、このような経理マニュアルの必要性と作成上の留意点について考えてみたいと思います。

経理部門での課題の例

経理部門では、例えば、以下のような課題を抱えているケースがあります。

  • そもそも、処理ルールが定められておらず、正しい処理を行えないケースです。この原因には、新会計基準の適用、関連法令の改正に対応できていないことや、ジョブローテンションにより担当者が変更になった、新しい事業の立ち上げにともなう新しい処理を担当者が把握していないといったことが挙げられます。
  • 次に、業務の定着化を行えていないケースです。これは経理処理に必要な書類データを探すのに時間が掛かったり、処理を行うタイミングが年に一度などのため処理方法を思い出すのに時間が掛かったりすることが原因である場合があります。
  • また、業務が属人化し、担当者の不在時に業務を回すことができないというケースもあります。具体的には、長年にわたり経理業務を担当していた社員が、退職などの理由で業務を行えなくなり、十分な引継ぎが行われていないなどのケースです。

課題への対応策としての経理マニュアルの作成

このような課題に対応するためには、いずれも各種経理マニュアルを作成することが有効です。そして、この各種経理マニュアルはさまざまな目的で複数作成し、それぞれの業務手順を明文化するとより効果的です。その際、以下のような点に留意することが重要です。

  • 会計基準などへの対応後の処理工数が膨大にならないように、実務の効率性とのバランスを取る。
  • 書類データの保存場所、ファイル名のルールを体系化し、明確にする。
  • 事後でもミスを発見できるようチェックポイントを作成する。
  • 関係者がいつでも見られるような共有フォルダーなどに経理マニュアルを格納する。
  • 年間スケジュール、決算スケジュールをあわせて作成する。

経理マニュアルの運用の限界

なお、経理マニュアルの運用は、以下のような限界が生じることがあります。

  • マニュアルで想定していない例外的な取引には対応できない。
  • より効率的な手順がある場合でも、業務が膠着化し改善されない可能性がある。
  • マニュアルの作成に時間が掛かる。
  • マニュアルの運用開始後のアップデートが適時になされずに、かえって業務のミスの原因となる。

上記限界に対して考えられる対応

上記限界に対しては、以下のような対応を行うことが考えられます。

  • 例外的な取引は、事前に経理責任者を含めて周知し、処理を検討できる体制を整える。
  • 経理業務に詳しい担当者あるいは外部の専門家がマニュアルを作成する。
  • ドラフト作成後に関係者とコミュニケーションを行い、必要に応じてマニュアルをブラッシュアップする。
  • 運用開始後に最新の会計基準などを考慮のうえ、定期的にマニュアルの見直しの必要性を検討する。

状況に応じた経理マニュアルの見直しの必要性

近年、経理業務では、クラウドの会計システムやワークフローシステムの導入、取引に関わる書類などの電子化、データ入力・データ連携の自動化などにより、リモートワークや、紙による作業の削減が進んでいます。また、国際的な会計基準との整合性を図るための会計基準の改正も進められています。このため、すでに経理マニュアルを作成されている企業様でも、このような状況に応じて見直しを行っていくことが必要です。

当社のサービス

当社では、公認会計士が、経理規程・細則や経理マニュアルの作成のほか、それらの見直しについても支援しております。上記のような課題をお持ちの企業様は、ぜひ、当社の支援サービスをご活用ください。