• 退職金制度は終身雇用を前提とした日本独特の制度の一つです。長期間同じ企業に勤めることで増額する仕組みは「長期後払いの賃金」となり、社員を定着化させる長期的なインセンティブとして機能してきました。
  • しかし、今この仕組みに少しずつ変化が出てきました。厚労省が2018年に実施した「就労条件総合調査」によると1989年に約90%の企業に導入されていた退職金制度は、2018年には約80%に減少しています。また、従業員1,000名以上の企業で07年には3千万円だった支給額も17年には300万円以上減少しています。
  • 雇用の流動性が高まり終身雇用が崩れつつある中、更に今回のコロナ禍でメンバーシップ型からジョブ型の人事制度への移行が強く求められており、退職金制度も大きく見直すタイミングを迎えています。
  • 退職金支給額の計算式は、今現在も「退職時の基本給勤続年数に応じた支給係数」で計算される企業が多く、2018年東京都産業労働局の調べでは44%の企業が採用しています。このことは「基本給は下げられない」ということに少なからず影響しています。年功的な基本給から上がることも下がることもあるジョブ型の職務給・役割給へ移行するためには、退職金制度も見直す必要があります。
  • しかしながら退職金制度の見直しは簡単ではありません。長期後払いという性質上、社員ひとり一人のシニア期の人生設計に組み込まれている場合が多く、変更は容易ではありません。また、金額も大きく廃止や精算のためには企業体力も必要となります。会社として方向性を示し、中長期的に見直していくことが重要となります。
  • シニアや女性を活用していくことは重要な課題です。しかしそれは年功制度の延長では対応できないことは明らかです。ジョブ型への移行が叫ばれる今、職務・役割や貢献度に応じた退職金制度の見直しを検討することをお勧めします。