賃上げをきっかけに人財との向き合い方を考える

歴史的な物価高による実質賃金の低下という背景もあり、2024年春闘では定期昇給とベースアップを合わせて「5%以上」の賃上げを求める闘争方針とのことです。

日本の経済を支える企業経営においては、それぞれの企業が主役であり重要な役割を担っています。そんな企業経営がうまくいくために、賃上げと価値向上(価格転嫁)がセットで進むことが必要だと考えます。
「物価高だから賃上げ」だけで終わらないように、実りある賃上げとするためにはどのようなアプローチが考えられるでしょうか。

理想的なアプローチとしては、「賃上げに対する考え方の転換」があります。「そういう社会情勢だから」「他社も賃上げしているし、仕方がないから」という考え方から、「意図のある前向きな賃上げ」に転換することが理想だと考えます。現在の物価高と賃上げの波をきっかけに、人財に向き合う機会とすることができれば良いのではないでしょうか。ピンチをチャンスに変える姿勢が重要だと考えます。

賃上げは人財マネジメントの仕組みにおいて重要な論点です。賃上げと併せて人事制度の体系的な見直しを推奨します。

賃上げの目的はさまざまありますが、人財マネジメントにおいては「人財活性化」という要素が重要であり、その目的を起点に人事制度を検討すべきだと考えます。賃上げのためには、その原資となる利益を企業として創出しなければならず、商品・サービス価値の向上が必要となります。付加価値向上の実現にはそれぞれの役割を果たす人財が必要です。

そのような考え方から、人事制度は社員一人ひとりの役割に基づいて構築されるべきだといえます。賃上げと付加価値向上の両立のために、役割に基づいた給与を考える必要があります。

体系的な人事制度を整備することで、在籍中の社員のほか、今後入社する社員の人財マネジメントを効率的に進めることができます。企業の持続的な利益創出のための基盤として人事制度の整備は急務だと感じています。

人事制度構築を進めるにあたっての第一のポイントは、経営戦略や経営目標、企業としての理想の姿を出発点に、企業の思いと社員の思いが共振することだと考えます。理想の姿を実現するために企業としてどのような人財を求めるのか、人財にどのように活躍してほしいのかを明確にする必要があります。賃上げ検討を機に人事制度の見直しをお勧めします。