人事制度構築支援
人事制度は、社員一人ひとりの成長を支え、会社の方向性と足並みを揃えるための重要な仕組みです。ところが現場では、「なぜこの評価なのか説明がない」「昇進の要件がわからない」といった声が後を絶ちません。
こうした不満の背景には、制度そのものに問題を抱えているケースもありますが、運用が現場任せになっていることも一因です。制度があっても、社員に期待される内容が十分に伝わっておらず、理解されていなければ、制度は機能せず、信頼も得られません。
例えば、昇進の条件が明示されず、評価結果の説明もないまま「昇格です」とだけ伝えられるケースです。こうした運用では、「自分がどう評価されたのか」「何をめざせば良いのか」がわからず、不安や不満が募ります。また、伝え方や評価者によって対応に差があると、「評価は公平なのか?」という疑念も生じます。
こうした課題に対し、近年では制度を整えるだけでなく、「見える制度」「伝わる制度」をめざす企業が増えています。いわゆる「隠さない人事部」の取り組みです。評価基準や昇進条件、等級ごとの期待行動を明文化し、全社員と共有する企業が増えています。制度が「一部の人しか知らないもの」ではなく、社員全員が理解し、行動につなげられる仕組みへと変わってきています。
ある製造業では、等級制度の導入に合わせて、求められる行動を一覧にまとめて全社員に配布しました。併せて、管理職向け研修では「評価の伝え方」「制度の背景を説明する力」の強化にも取り組んでいます。制度が現場で活かされるには、管理職層が制度を深く理解し、自分の言葉で伝えることが欠かせません。
また、あるグローバル企業では、制度改定の目的や背景、社員への影響を整理した資料を作成し、社内に展開。併せて研修内に「制度理解セッション」を設け、制度を自分の業務と結び付けて考える時間も設けています。FAQや動画も整備され、誰もが同じ情報にアクセスできる環境が整っています。これにより、属人的な運用や部署間のばらつきも抑えられています。
このように「制度をつくる」「伝える」「育てる」を一体で考えることで、社員は自らの役割を理解し、次に何をすべきかを主体的に考えるようになります。研修で学んだことが評価につながり、評価された行動が次の目標となる。こうした好循環が生まれることで、人事制度は単なる仕組みから、成長を支える土台へと進化していきます。
「隠さない人事部」がめざしているのは、単なる情報公開ではありません。制度が社員一人ひとりに伝わり、理解され、行動に結び付いているか、今一度、組織全体で見直すタイミングかもしれません。