働き方改革のもと、キャリアの形成や労働力の効率的な活用を促進する施策として、厚生労働省は2018年に副業の位置付けを「原則禁止」から「原則容認」としました。
解禁当初は、本業への影響、労務管理の煩雑さや情報漏洩などを理由に、社外副業を認める企業は少ない状況でしたが、2020年からのコロナ禍を契機に、キャリア形成や労働力確保だけでなく収入確保の観点からも副業を認める企業は増加傾向にあります。経団連が2022年10月に発表した調査結果によりますと、2018年に副業を「認めている」と回答した企業は約3割でしたが、2020年以降急激に拡大し、2022年には副業を「認めている」と回答した企業は53.1%。「認める予定」を含めると7割を超える結果となっています。

しかし、副業を認めるルールの導入が進むなか、一方でその仕組みの活用状況はあまり進んでいない実態が見えてきています。
(株)パーソル総合研究所の調べ※では、副業を容認する企業で「現在副業をしている」と回答した比率はわずかに9%という結果になっています。

そうしたなか、「社内副業」という仕組みが注目を集めています。社内のさまざまな部署の仕事を副業として取り組むことのできる仕組みで、そのメリットとデメリットは以下のように整理できます。

社内副業のメリット

  • 社員のさまざまなキャリア機会を創造できる
  • 人財の長期的な活用度が向上する
  • 社外への人財流出を防止できる
  • 社内人財流動性の活性化が、長期的に外部も含めた人財の流動性向上につながる
  • 労務管理がしやすい(労働時間や社員の健康管理)
  • 情報漏洩のリスクが軽減される

社内副業のデメリット

  • 収入は直接的には増加しない
  • 指示・命令系統の複雑さが生じる
  • 副業として担当させる仕事・役割を明確に切り出す必要がある(ベースとしてジョブ型の人事制度が必要)

社外副業を認めることは、会社としては優秀な人財の流出や労務管理の煩雑さなどが、社員の側としてはハードワークによる健康上の懸念やワークライフバランスを失うなどのリスクが伴います。そうしたリスクを意識するあまり現実的に活用することができないルールを整備して、二の足を踏む企業も少なくないと思います。

その点、社内副業という仕組みは社外副業のデメリットを解消し、社員のさまざまなキャリア機会の創造に資するばかりでなく、中期的には社外副業も含めた人財流動化の素地の強化にもつながります。

社内副業は、現在も日本企業の多くに見られる会社主導の兼務と異なり、本人の自律的な働き方を支援する仕組みでもあります。
テレワークという働き方が普及したことにともない、さまざまな部署での仕事を場所に制約されずに遂行することのできる環境が整いつつあります。改めて、社内副業について検討してみてはいかがでしょうか。

※出典:(株)パーソル総合研究所 第二回 副業の実態・意識に関する定量調査
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob2.html