人事制度改定を成功させるポイントを、失敗事例から学ぶ

昨今、企業を取り巻く環境の変化を背景とした、人事制度の見直しについてのニュースが多いように思います。例えば、「ジョブ型人事制度」は、企業の人事制度のなかでは、等級制度(社員を格付けする制度)の領域の話です。等級制度は社員の処遇に関わる制度(評価制度や賃金制度)の基盤となる制度のため、この仕組みを変えることは企業にとって大きな決断であるといえます。

この等級制度に限った情報ですが、一般財団法人労務行政研究所の調査(196社)によると、2017年~2021年の5年間で等級制度を改定した企業の割合は34.2%とのことです。
このような調査からも、頻繁ではないものの、数年に一度は人事制度改定が検討される、または実施されていることが推察できます。

このような背景から、人事制度改定の当事者である人事部門の方においては、誰もが不慣れな状況であり、自社の改定について悩まれることが多いと想像します。では、数年に一度訪れる人事制度改定を円滑に進めるためには、どのようなポイントに留意すればいいでしょうか。

視点の一つとして、失敗事例から学ぶということが挙げられます。「つまずきポイント」を知ることで、人事制度改定を成功へ導くことにつながると考えます。
このつまずきポイントは大きく3つあります。

  1. 制度の内容そのものの失敗
    例)流行している制度をそのまま取り入れたが、自社の風土に合わなかった。
  2. コミュニケーション上の失敗
    例)経営層、人事部門では密に議論をしていたが、現場の意見確認をおろそかにしたため、制度導入後、現場からの不満が続出した。
  3. 運用の失敗
    例)制度設計・導入はうまくいったが、制度をつくり込み過ぎてしまい、運用面での負荷が大きくなってしまった。

ほんの一例ですが、このような失敗事例から学ぶことができる人事制度改定の大事なポイントは、「自社に合った制度か」「当事者を巻き込みながら設計したか」「導入後の運用は問題なくできるか」ということであると感じます。この3つの視点を考慮しながら進めることで、自社ならではの人事制度改定を実現できるのではないでしょうか。

各社の、「華々しい」「斬新な」人事制度導入事例は数多く報道されていますが、他社もやっているからと雰囲気に流されるのではなく、内容を吟味したうえで、自社はどうするかを検討されることをお勧めします。人事制度改定は何のために行うのか、目的に立ち返ることが必要です。検討にあたっては、上記のような失敗事例から学ぶことも一案だと考えます。