OJTを機能させるために、人事部がやるべきこととは

人財育成のために、多くの職場で取り組まれていることといえば、OJT(On the Job Training/職場内訓練)ではないでしょうか。
職業能力の開発には、「70:20:10の法則」というものがあります。これは、「能力開発に影響を与えるのは、70%が業務経験、20%が薫陶(上司・先輩からの助言やフィードバック)、10%が研修」というもので、実際の業務を通して学ぶOJTが重要であることは間違いありません。

ところが実際には、OJTは現場任せで、配属先によってやり方はまちまち、人事部では実際にどう指導しているのかを把握していないという声もよく聞きます。
人の成長に最も影響するからこそ、きちんとOJTを機能させたいものです。そのために、今回は人事部が実現できる仕組みを2つ紹介します。

1.OJTは、意図的・計画的に

厚生労働省の令和3年度「能力開発基本調査」によると、「計画的なOJT」を正社員に対して実施した割合は59.1%です(正社員以外に対しては25.2%)。
おそらくほとんどの職場で、上司・先輩が仕事を教え、実践を促す「OJT」は行われていると思いますが、ここでいう「計画的なOJT」とは、計画書を作成するなどして教育担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定め、段階的・継続的に実施する教育訓練を指します。

育成を意図して、効果的・効率的なOJTを行うためには、「何を、いつまでに、どこまでできるようにさせるのか(目標設定)」と、「そこまでの道筋を立てる(計画化)」ことが必要です。
同時に、この目標・計画は、教育担当者と対象者だけでなく、その上司や部門全体で共有しておくことも重要です。OJTは教育担当者にとっての仕事・役割の一つであり、そのために必要な時間は確保し、指導ぶりは評価されなければいけません。

したがって、まずこの「計画化する」「部門内で共有する」「OJTの実践を評価する」仕組みをつくることが、人事部の役割となります。

2.OJT担当者に対する教育を行う

人事部からのサポートとしてもう一つ重要なことは、OJT担当者に対して教育・研修を行うことです。
高い業務遂行能力があっても、効果的な指導・育成ができるとは限りません。影響が大きいのは、対象者に合わせたコミュニケーションスキルや、多彩な指導スキルです。例えば新入社員との世代差だけでも、伝え方は変わってきます。これまでの経験だけでは身に付いていないかもしれない、指導者としての体系的な学びが必要になることもあります。

こうした場面に合わせた指導法、コミュニケーションスキル、適時・適切なフィードバック、褒め方・叱り方など、OJTに必要な知識・スキルを身に付ける機会を設けることは、人事部の役割です。

新入社員や部門異動者の多い時期です。せっかく加わった仲間に早く成長し、長く活躍してもらうために、人事部として、現場での教育を支える仕組みを整えていきましょう。