物価高を受けて、2023年の春闘は満額回答が相次ぐなど、大企業では例年にない高い賃上げ率となっています。
コラムを執筆している時点では、中小企業に賃上げが波及するかは不透明で、価格転嫁が進んでいない中小企業と大企業では二極化するのではないかともいわれています。
しかし、中小企業も、賃上げしなければ人財が流出して倒産(賃上げ倒産)するリスクを負っており、また、「賃上げできない企業は淘汰されてやむを得ない」という厳しい見解も聞かれます。
このように「賃上げできないこと」は大きなリスクとなるため、経営環境が厳しいなかでも生き残りをかけて、先行投資としての賃上げを実施する中小企業が多く出てくるのではないかと予想します。

さて、賃上げは本来、付加価値の向上とセットで行うべきもののはずですが、今回の賃上げは物価高が大きく影響しています。
付加価値の向上がなければ持続的な賃上げも実現できず、今回の賃上げも「物価高を受けた一過性のもの」で終わってしまう可能性があります。
そのため、付加価値と賃金を両輪で向上させる好循環を生み出すべく、賃上げと併せて「付加価値を志向した人事制度への転換」も行うべきと考えます。

例えば、人事制度が年功的な仕組みであれば、付加価値の高い優秀な人財にとって魅力的な会社とはいえません。付加価値の高い人財が高く処遇される、実力主義の仕組みであることが必要です。
また、「どのような付加価値を生み出すと、どのような賃金になるのか」が明確でなければ、優秀な人財が自律的にキャリアを形成することはできません。そのため、等級定義が明確で、賃金制度や昇降格のルールに透明性・説明性があることも必要です。
当然、評価制度も付加価値の高さを評価できる仕組みであるべきでしょう。

皆さんの会社の人事制度は持続的な賃上げを生み出す仕組みになっていますでしょうか?
賃上げを機に、付加価値志向の人事制度への見直しも検討することをお勧めします。