専門性と複線型人事制度

近年、働き方を含めたライフスタイルの変化にともない、仕事に対する価値観の変化など従業員のキャリア観も多様化してきました。管理職をめざすキャリアパスだけではなく、専門職やスペシャリストへのキャリアパスを描く従業員も増加しています。
ビジネスの環境はますます複雑化し、技術が急速に発展し、新たな職種も生まれています。新卒採用でジョブ型採用を取り入れる企業も出始めるなど、人財にもより専門性の高い知識やスキルが求められ、その重要性が高まっています。個人が専門職のキャリアパスをめざす背景には、今まで以上に専門性が重視されていることがあると考えます。

一方で、昇進や昇格のキャリアコースが1つだけという単線型人事制度では、昇進・昇格が主眼とされるため、専門職・技術職の成長や、専門性やスキルの評価が適切に扱いづらい状況が発生しています。
また、組織構造も階層型からフラット型、マトリクス型などさまざまな種類に変化し、現行制度と相まって運用しづらいといった声も聞かれるようになりました。
そこで、複線型人事制度の導入検討や見直しを行っている企業が増えています。
企業における複線型人事制度の実施状況推移は、2010年で38.0%、2013年で42.1%、2018年で45.5%(一般財団法人労務行政研究所による調査)と今後も増加が見込まれます。
複線型人事制度の導入にあたっては、目的が明確になっている前提で、以下の検討が必要となります。

(1)キャリアコース設定

事業戦略に基づきどんな組織でどんな人財を採用して育てていくのか、どんなポジションにどんな報酬を与えるのかなどを踏まえたコース設定

(2)専門性の評価

専門性を評価する視点や指標、軸などを含めた評価基準、プロセスの策定、評価者の目線合わせやトレーニング

(3)コミュニケーション

評価者、被評価者間の双方の意見交換や目標の合意、評価結果フィードバックなどを通じた個人のキャリア開発計画

複線型人事制度を導入することによって個のエンゲージメントを高め、リテンションの効果も期待できるといったメリットがありますが、オペレーションは煩雑になります。
導入によって何を得たいのか、目的と期待される効果を明確にすることが第一歩となります。
BBSでは複線型人事制度の導入支援を数多く手がけています。検討の際はお気軽にご相談ください。