内定式や入社式の時期が近づくと、新入社員の初期配属先への不安や「配属ガチャ」といった言葉、希望が叶わなかった場合の早期離職などの話題が多く聞かれるようになります。
新卒一括採用、ゼネラリストとしての育成が一般的な日本企業では、配属先がわからない不安の声は以前からありましたが、自分で職種・部署を決めたいと考える傾向は強まっているようです。

2023年6月に株式会社マイナビが実施した「マイナビ 2024年卒大学生活動実態調査(6月)」によると、配属先は「勤務地・職種ともに自分で判断して選びたい」という学生が50.4%で最も多く、配属先を入社前に知りたいと答えた学生は87.7%、とくに「内定通知前の面談・面接」や「内定通知と同時」の割合が前年より増加し、より早い段階で知りたいと考える学生が増えています。

株式会社リクルートの就職みらい研究所が2023年6月に実施した「就職プロセス調査」でも、就職先を決める前に、配属先が「確約されている方が良い」「どちらかというと確約されている方が良い」と回答した割合は約8割に上ります。

今の学生は、単に就職支援としてのキャリア教育だけでなく、義務教育の頃から段階的に、自ら主体的にキャリアを形成するための教育に触れてきています。
就職したら、配属・異動は会社が決めるもの、さまざまな部署を異動しながら経験を積んでいくというキャリア観から、自律的にキャリアを考え、自ら学び、専門領域を形成するという流れに変わってきているといえます。
これは、会社任せではなく、自ら目的意識を持って学び、必要な知識・スキルを身に付けることとも結び付き、会社にとっても望ましいことでしょう。

とはいえ、大半の新卒新入社員は、ほぼ実務経験がなく、適性もわからない状態ですから、専門領域を早期に固めすぎず、ローテーションなどの従来の手法で計画的に育成していくこともやはり有効です。
その際、これまで以上に意識すべきことは、コミュニケーションの取り方です。キャリアの道筋や配属決定の理由、個々への期待をしっかりと伝えることが重要になるでしょう。

一方、一部の企業では、新卒新入社員から配属先を限定した職種別採用を行うところも出てきています。ジョブ型雇用に移行する企業が増えるなか、その対象が若手層にも広がってきているともいえます。
若手のキャリア意識や専門性志向が強まるなかにあって、職種別採用は企業のアピールポイントの一つとなり得ます。

ただし、単に採用において職種を限定するだけでは、効果的な仕組みにはなりません。
ジョブ型雇用とは、仕事内容や役割を起点とするものであり、それらをもとに仕事の価値や必要なスキルを定義し、採用・育成計画を立案するものです。従来のメンバーシップ型とは、給与体系や評価の仕組み・項目、人財育成の仕組みも異なります。
職種別採用やジョブ型雇用の導入にあたっては、人事制度全体の抜本的な見直しが必要になるでしょう。