このシステム、うちのExcel業務にも使えませんか?

世の中にある予算管理システムには、主にスプレッドシート形式のインターフェース、とりわけExcelと親和性の高い製品が多くあります。この予算管理システムを導入し運用を開始すると、しばらくしてこういう意見をお聞きすることがよくあります。
「このシステム、うちのExcel業務にも使えませんか?」
本日は予算管理システムを使用した他業務への横展開についてお話しします。

ご相談をいただく機会が多く、実際の導入事例も多いExcel業務としては、以下のようなものがあります。

業務例 領域 タイプ 業務起点
見積書、実行予算書などの申請・承認業務 ワークフロー ワークフロー申請型 申請者が起票
(ボトムアップ形式)
人事評価シートの収集業務 人事 バケツリレー収集型 事務局から配布
(トップダウン形式)
営業案件の引き合いや受注情報の管理業務 営業/業績管理 台帳更新型 利用者が随時
(フラット形式)

(1)ワークフロー申請型(例:見積書、実行予算書などの申請・承認業務)

このタイプの業務においては、起票する部門はどこか、途中承認、最終承認する部門はどこであるかを洗い出し、フローを可視化することが重要です。システムに求められる機能としては、組織階層にとらわれず柔軟なフローを定義できること、また承認進行に応じて関係者に通知をプッシュ配信できる仕組み、代行承認機能などがあり、これらが業務を円滑に進めるポイントになります。また、過去に起票した申請書の検索や、過去の申請書から複製して新規申請ができると利便性が増します。

(2)バケツリレー収集型(例:人事評価シートの収集業務)

このタイプの業務においては、ユーザーごとの権限管理を確実に行う必要があります。予算管理業務においても他部門の数値を公開しないようにシステムを設計しますが、人事領域においては個人レベルでより精緻にセキュリティを管理することになります。また、社員個々がユーザーになるため、システムのライセンス利用料(通常はユーザー数に応じて課金)が増加するため、費用対効果を十分に検討する必要があります。

(3)台帳更新型(例:営業案件の引き合いや受注情報の管理業務)

このタイプの業務においては、従来一つの台帳を全員で更新しているようなケースがあります。この場合、同時編集性を保ちつつ更新の衝突を防ぐ仕組みを構築できるかどうかが重要になります。台帳の管理単位を部や課などの最適な範囲に分割しつつ、一方で参照時は、事業部や全社単位で一つの表に集計できるようにシステムを設計します。また、複数名が同じ情報を同時に更新した場合に、バッティングをユーザーに知らせる仕組みも求められます。

(4)まとめ

三つの例を対象に各々のポイントを挙げました。
単に【Excel業務】といっても、業務の特性により、システム化するうえで押さえるべきポイントが異なります。それらに対応した機能がシステムに備わっているかを検討し、備わっていない場合は、別手段での代替可能性を踏まえて評価することが重要です。
対応できないポイントがある、あるいは代替手段によるデメリットがある場合、無理にシステム化せずExcelのまま据え置く判断も必要です。この過程を経ることが“横展開”を成功させる最大のポイントになります。
Excelは非常に汎用的で自由度の高い強力なツールです。システム化により、データベース化され一元管理できる一方で、個人の自由度は低下する面もあります。メリット、デメリットをきちんと精査したうえで適用を検討することを推奨いたします。