収益戦略システム「AKARI」の構築

トヨタ自動車株式会社様 Part2

収益戦略システム「AKARI」をさらに発展させ、中期経営計画策定プロセスの高度化を実現

収益戦略システム「AKARI」をさらに発展させ、中期経営計画策定プロセスの高度化を実現

お客様プロフィール

トヨタ自動車株式会社

創立:1937年8月28日
本社所在地:愛知県豊田市トヨタ町1番地
従業員数(連結):37万870名(2019年3月末現在)
事業内容:自動車の生産・販売

古津 大輔 氏
古津 大輔 氏

コーポレートIT部
プロジェクト推進室 主幹
CV統括部 プロジェクト管理室 主幹

概要

トヨタ自動車株式会社様では、2016年に経営ダッシュボード「TOBIRA(トビラ)」と収益戦略システム「AKARI(アカリ)」を稼働させました。
「AKARI」はその後も機能拡張が図られ、2018年に「環境規制」の機能を追加。2019年には、中期経営計画策定プロセスの高度化に着手し、効果が大きいところから順次機能リリースしています。BBSでは、「TOBIRA」「AKARI」の開発当初からプロジェクトに参加し、同社グループにおける収益の最大化、グローバル市場でのさらなるプレゼンス向上に大きく貢献しています。

tobira akari

迅速・的確な意思決定を支援する「TOBIRA」と「AKARI」

トヨタ自動車様では、100年に一度といわれる自動車業界の転換期のなか、より迅速な経営判断ができるよう、2016年1月に経営ダッシュボード「TOBIRA」を稼働させました。これは、基幹システムや部門システムから各種KPIやKGIの算出に必要な情報を抽出して一元管理し、これらの情報を多面的に分析し経営層が経営判断の指針にするというものです。

さらに、同年4月に同社が4カンパニー制に移行したことを受け、車種別の収益極大化に向けた仮説検証機能をもつ収益戦略システム「AKARI」の開発に踏み切り、2016年末までに「車種別実績収益」「市場不具合件数」「収益計画」などの管理機能を稼働させました。こうして、これまでの意思決定リードタイムが大幅に短縮されたことを受け、利用するカンパニーも順次全社に広がっていきました。

この「TOBIRA」「AKARI」の開発プロジェクトに当初から参加し、システムの開発をサポートしたのがBBSです。

最適化されたアジャイル開発手法

このプロジェクトに成功をもたらした理由の一つが、アジャイル開発手法です。構築の長期化によって、システムが完成した頃には仕様や要件が変わっているということはよくあります。今回のプロジェクトでは、全体計画、グランドデザインを見据えたうえで、効果が出やすい業務領域から構築・リリース・改善を行い、やり直しを恐れず早期にビジネスの現場に投入しました。

「システムの変更には、既存の業務プロセスの変更に伴う抵抗がつきものです。それらの理解活動を行い、会社全体の経営目線で、収益最大化、プロセス最適化のために要件を再考し、業務プロセスの再構築も辞さず、我々コーポレートIT部も“モノ言う情シス部隊”として一緒に業務に入り込んでワーキンググループ形式で業務要件、システム要件を作り上げたことも成功要因だと思います。」と古津氏は振り返ります。

機能拡張にも引き続きBBSがサポート

「AKARI」はその後も、競争力の源泉となるべく、順次機能拡張が図られます。その際にもBBSは、トヨタ自動車様の指名を受け、開発のサポートをさせていただきました。

BBSを選択した理由について、古津氏は次のように話します。

「BBSは、もともと当社の会計システム、工場で利用している予算管理システム、さらには全社の中計策定システムやレクサスの中計収益策定システムなど、豊富な会計・収益についての開発実績がありました。TOBIRAの業務要件が固まりきらないときでも前向きに対応してくれていたので、今回も力を発揮してもらえると考えました。標準化された開発手法を守り続ける保守的なベンダーとは違い、単に決められたシステムを納品するだけではなく、我々に寄り添い「必要なもの」を、「必要なタイミング」で提供するために、変化を恐れず柔軟に対応してくれます。」(古津氏)

「収益」と「環境規制」を組み合わせた、より的確な収益計画

2018年には「環境規制」に対応し、既に稼働中だった「収益計画」と合わせて、構築予定モジュールの内、2モジュールが稼働しました。環境規制への対応は、収益を予測するうえで、大きな意味を持つと古津氏は言います。

「世界各国で環境規制は異なっています。環境規制と車種別の収益最大化を両立させた経営判断ができることで、的確な収益計画が立てられます。AKARIで収益と環境規制を組み合わせることで、各国の環境規制値をクリアしつつ、収益を最大化するために必要な車種別アクションがとれるのです。シミュレーションされた将来の絵姿と一緒に提示され各事業体(北米・欧州・中国)が、一つのプラットフォームで意思決定できるようになりました。」(古津氏)

環境規制と収益計画をリリースし各部・各国での業務運用をした後に、アンケートやヒアリングを行ったところ、業務担当者から以下のような効果があったことが感謝の言葉とともに寄せられています。

情報のリアルタイム性
  • 各地域の最新情報の共有がオンタイムで可能
  • Excelではいつ送ったものか最終版がわかりにくかったが、AKARIが最終値だというのが徹底されている
情報の一貫性
  • 担当部分しか触れないので、情報の継続性が保持できる
  • 台帳が忠実に反映されるので、内容に信頼性がある(Excelは変更できるために信憑性に欠けた)
他部署との確認・やりとり工数削減
  • Excelデータのやり取りが不要になり、煩雑さが激減
  • 燃費値、規制値、空車重量等の必要情報が全て入っており、他部署に確認する工数を削減できた
シミュレーションのしやすさ
  • 台数入力から結果確認までの時間が、Excel利用時より圧倒的に早い
  • 全体の見える化、LEDヘッドライト・高効率エアコンといったエンジン外燃費向上アイテムの定量化により収益効果算出が楽になった
  • Excelのようなマージの手間が省けるため作成時間が短縮できる
  • 機能が制限されていることにより、今までCAFEに消極的だった人が、安心して計算し、シミュレーションできる
操作性
  • 各国共通のGUIで操作性がよい

中期経営計画策定プロセスの高度化にも着手

また2019年度には、中期経営計画策定プロセスの高度化にも着手しました。これまで、中期経営計画は以下のような手順で行われていました。こうした「リレー型」では、情報を“バケツリレー”することになるため、各プロセス間の情報が分断され、手戻りが発生するなど連携困難で、調整に時間がかかっていました。

リレー型の中期収益計画策定

そこで、「リレー型」から「同期型」に転換。各計画間でのシミュレーションにより多面的に検証し、ベストな収益計画が立てられるようにしました。 “変化点”の“面”への影響範囲を把握でき、より柔軟で多面的なシミュレーションがスピーディに行えるようになりました。

同期型の中期収益計画策定

意思決定が一つのプラットフォームでできる仕組みを目指す

今後、トヨタ自動車様では、「生産計画」「事業・販売計画」等のモジュールも導入し、経営プロセス高度化を図っていく考えです。また、4カンパニー以外のZEVファクトリー(Zero Emission Vehicle)、パワートレーン、コネクティッドなどの社内カンパニーや、グローバルトヨタへの各事業体、グループ会社への展開も考えています。

「何を、どこでつくり、どこで、どれだけ売るか。商品の企画開発~会社経営に関わるすべての人に使ってもらえる仕組み、意思決定が一つのプラットフォームで可能な仕組みにしたいと考えています」と、古津氏はさらに意欲をみせます。

BBSではこれからも、トヨタ自動車様の取り組みを全力でサポートさせていただきます。

※お客様のプロフィールや取材対象者様の所属などは取材当時のものです。